第11話

放課後までは机にあったのを覚えてるから、恐らくそのまま置きっぱなしで出ていってしまったんだろう。



面倒くさいと思いながらも、ケータイが無いと何かと不便なので



「わりぃ、ケータイ忘れたから取ってくるわー」



と少し大きめの声で他のやつらに告げて、早歩きで外へと向かった。



途中、翼の「早く戻ってこいよー」という声が聞こえたけど、それを背中で受けるだけにして俺は小走りで学校を目指した。







授業が終わってしばらくたった学校内は、やっぱり静かだった。



外では今から帰ろうとしてる学生や部活をしている学生達の声が聞こえるけど、校舎内は日中の騒がしさとは違って、閑散としたものだった。



その中で響くのは、教室に向かって歩く自分の足音だけ。


その光景を、夕日のオレンジ色が綺麗に染めていた。



(あ~…。なんで忘れるかな……)



歩きながらため息をついて、一番奥にある自分のクラスに向かう。


ため息をついたのは、携帯を忘れたからだけが理由では無かった。



(…今日はいねぇって、知っちゃってっからな…)



そう、今日の放課後は


 [相澤がいない日]


と、わかっていたから



いつも早くなるこの足取りも、重くて仕方がなかったのだ。



(ケータイ取って、早く翼達んとこ戻ろ)



そう思いながら見つめる自分の影は、教室に近づくにつれ、身長を縮めていっていた。

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