第3話
あれから10分。
今日初めてまともな会話をしてから10分。つまり10時40分。
不意に誠がむくりと起き上がって。
1階のリビングに下りていった後、いつのまにか着替えていて、親切にも氷入りの麦茶を持って再び部屋に上がってくるまで
「……、」
あたしはいつものように、くつろげずにいた。
窓の外で、太陽はサンサンと照りつけているけど、25℃のエアコンが付いている誠の部屋はとても涼しい。
――ガチャ。
『……まだ正座してたの。』
カラン、と、氷が揺れる音と同時に入ってきた誠は、部屋を出る前と変わらぬ姿勢でいたあたしを見て、少しだけ目を見開いた。
「……、」
『弥生。』
「……、」
『もう痛くないから。』
…申し訳なくて、黙って俯くあたしを見下ろしながら、軽く溜め息を吐いている。
でも、いつもの穏やかな声色に戻っているのを感じ、両手は膝についたまま、あたしはそろりと視線を上げた。
ラフなΤシャツと短パン姿の誠は、右手に2つのグラスが乗ったお盆を持って、左手でドアを閉めた。
そしてあたしの前で体を屈(かが)め、『ほら、欲しかったら足崩せ』って、グラスを差し出してきた。
「ありがと…。」
エアコンが付いていたとは言え、喉がカラカラだったあたしは、素直にその命令に応じる。
実は、ちょっと足が限界だったりしたのもある。
グラスを受け取り半分くらいを一気に飲み干すあたしを見て、『よし。』なんて、満足気に笑う誠。
……なんか、あたしの方が年下みたいだ。
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