カフェ・モカ-after-

秘密の手紙

第21話

【国語つまんねー】


【そ?あたしは結構好きだけど】


【文章聞いてると眠くなる】


【五時間目だったらね(笑)】




今日もお馴染み、ノートの切れ端を使ってのやり取り。



梢は俺にちゃんと返事をくれながらも、俺が書いている時は、視線を黒板に向けてしっかりノートを取っている。



国語好きっつぅのはマジなんだな。





…ふと。


書いている手を止めて、左隣に座っている梢の横顔をこっそり盗み見る。



俺の視線に気付いていない梢は、黙々とペンをノートに走らせていて。





……―この横顔も含めて梢が好きだと想い始めたのは、いつからだったっけ。




隣の席になって。話すと気ぃ合う事が多くて。笑顔が可愛いじゃんとか思ったりして。





……そういや、このやり取りが始まったきっかけって、梢だったな。



数学の授業中で、その日俺が当たる日で。


答えがわかんなくて眉を寄せている俺の机に、不意に投げられたノートの切れ端。




開くとそこには、俺が当てられる問題の答え。


びっくりして左隣を見ると








(シーッ。)




立てた人差し指を口元にあてて微笑んでいる梢の姿。






………あぁ。



あの時か。




予想外な梢の行動に驚きながらも、その姿に心臓が高鳴って、暫くドキドキが治まらなかった、…――あの時から、俺は。







…―――パチッ



と、不意に、1ヶ月位前の事をぼんやり思い出していた俺と梢の目が合う。



中々返事が来ない事を不思議に思ったのか、それとも俺の視線に気付いたからなのか、キョトンとした眼差しを向けてきた。





(………そうだ、)



ふと、ある事を思い立った俺は、視線を机に戻し、ペンを握る。


切れ端に文字を綴って、今だに不思議そうにこっちを見つめている梢の机に、それを軽く投げる。



返事だと気付いた梢は、視線を切れ端に向け、机の下でそっと開く。




「―――…、」



目が見開いて、それと同時に頬が微かに赤くなった。



その姿を見て、俺はにやりとした。






…――さぁ、どんな返事をくれる?

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