unreliable boy

第15話

『――らーんこさんっ♪』


「え―…?って、わっ!?」



自分の名前を呼ばれて振り向こうとした瞬間に、後ろからかなり重い物に体の自由を奪われた。



それがなんなのか、正体は最後まで振り向かなくてもわかる。って言うか、こんな事するのは一人しかいない。


わかってて毎回やられる私も私だけど……。




「……浩介。重い。どいて。」


『おはようございます蘭子さん♪ こんな朝早くから蘭子さんに会えるなんて俺、感激です!』


「……人の話を聞けっつうの。」




いくら邪険に扱っても、後ろから私を抱き締めているこの男は、力を緩めてはくれない。


それどころか私の髪の毛に顔をうずめて『いい匂い…。』なんて言っちゃってるし!




「―…離れろって!」



僅かな隙を見計らって、浩介の腕の中から脱出する。



空っぽになった自分の腕の中を見て、浩介は『残念♪』って一言。




……本気で残念がってるようにも見えないんだけど。




「もう!私を見つける度に抱き付いてくるの、いい加減やめてってば。」


『えー、だって好きな人を見つけたら抱き締めたくなるのは当たり前でしょ?』


「―…っ、……だから、私は年下には興味ないって言ってるでしょ!」


『そんな悲しい事言わないで下さいよ。俺の良さ、じっくりわかっていけば良いじゃないですか。』




ね?と笑顔を見せる浩介に少しドキッとするも



「年下なんて、頼りなくって甘えたなだけじゃない!」





……いつものセリフを吐き捨てて、浩介に背中を向けてスタスタと歩き出す。




少し早歩きで講堂に向かいながらも、……後ろにまだいるであろう浩介の存在が、視線が気になって仕方がない。







……浩介と知り合って早2ヶ月。




最初の出会いは、学部の新入生歓迎会。


現在三年である私が入っている文学部に、新入生として入ってきた浩介。



先輩として、全員に分け隔てなく接した筈。


浩介に特別に愛想良くしたり、接したつもりはない。




……のに、何故か浩介に気に入られちゃって、その一ヶ月後に告白された。


年下に興味がないからって、キッパリと断ったんだけど……、




「……本当に、参っちゃうなぁ……。」

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