第4話

「はぁ……。」



重い溜め息一つ吐いてから、私以外誰もいない事務所の電気を消した。



時刻は午後7時。1時間の残業。


お昼休み以降、私はわかりやすく仕事が進まなくて、珍しく定時になってもやる事が残ってしまっていた。



階段を降りながら、失恋バースデーはケーキを買って家で一人で祝おう。そう思って玄関のドアを開けて――…、



『よう。お疲れさん。』


「仙道さん……?」



玄関脇に、仙道さんが寄りかかっていた。



体を起こし、私の方に近づいてくる仙道さんに、私は戸惑いを隠せない。



なんで、どうして今ここにいるんですか。細川さんはどうしたんですか。



狼狽える私を余所に、仙道さんは目の前まで来ると



『今日元気なかったけど、何かあった?』



珍しく残業だったし、と優しく尋ねる仙道さんに、私は込みあがってくる涙を我慢しきれなかった。



「せ、仙道さんっ、なんでここにいるんですかっ?」


『え…!?なんで泣いて…』


「細川さんはどうしたんですか?折角の誕生日に可哀想じゃないですか。」


『え?細川さん?なんでここで細川さんが出てくるんだ?』


「だって、付き合ってるんでしょう?今日、花渡したんでしょう?」



涙目で訴えるように見上げると、仙道さんは一瞬ポカンとして、



『…あぁ、あれは―…。』


「乃愛が、仙道さんが買ってる所見掛けたって。それに、細川さんがお昼、誕生日に貰ったって…。」



仙道さんの言葉を遮って話すけど、言って益々悲しくなった。


涙腺が壊れる前に、早く、行って下さい…。

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