焦る、爆ぜる、てかれる。
木田りも
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小説。 焦る、爆ぜる、てかれる。
このままじゃいけないことだけわかっているまま、背中を押され、放り投げられた。子供なら泣いて喚いて助けてもらう状況。大人になり、泣かなくても対処(器用ではない)が出来るようになった。平気なフリみたいに、気にしてないみたいに。心がズタボロなんて言うけどエスパーがいない限りは他人にバレない。察しのいい人間に対しては察されないようにすればいい。心を隠すなんて簡単だ。相手にされなければいい。どうでもいい人のことは案外どうでもいい。思うように動かない動かせない、出来ない人間などいずれどうでも良くなる。だから相手にされなくなるくらいにクズになれれば僕は
「平気」
になる。気を病むことも負い目を感じることも、出来ないことを悔やむ必要もない。そう、それで良い。僕にとっての理想はみんなと違うだろうがこれが僕の理想だ。少しは多様性というものを理解してほしいね。可哀想と思われるくらいなら哀れと思われた方がマシなのだ。本心でそう思っている。僕は可哀想なんかじゃない。ただの哀れな人間だ。だから気に留めず、期待もせず、好きにしていてほしい。最低限の仕事もいても困らないようにするし、周りの人が楽になれるように、貧乏くじも引くし、生贄にもなる。積極的に声を出して、ムードメーカーにだってなってやるし、飲み会の時はアッシーにもなるし、それでもそれが当然なんだから報われるなんて微塵も思ってないし、出る杭でもないから叩かないでほしいし、はあ。
。も使わないで一気に喋ると疲れてしまう。でもそれくらい捲し立てないと僕の話なんて聞いてもらえないって思う。僕は自分の話を聞いてもらいたいだけ。そして、世の中の人がいかに他人を優先的に考えているかを改めて気づいただけ。僕は他人を優先しているつもりだったけど、案外、自分の話ばかりするし、他人の話に興味なんてなかった。指摘されて僕のプライドがズタズタになり、かえって枕を濡らした。その日々を幾年も重ねてやっと辿り着いた何もしないという境地。今では自分が自分から話をすると驚かれるくらいになった。以前はどうやって話していたかな。どんな風にコミュニケーションを取ってどんな風に友達を作ってどんな風に遊んでいたかな。まるで自分が自分じゃないみたいになっている。まるで自分というものの演技をしている気分になる。虚構の境目から景色を見て何が好きなのか、何に興味があるのか、他人は何に興味を持つのか不明になった。僕はまだまだ青い。
(ビリビリに破かれた紙。古着古着、3袋分。シールまみれの箪笥。内側のジュースこぼした跡が染み付いている。シュレッダー。古いパソコン。エロサイトの検索履歴。昇降用の2段ベットの梯子。ゲーム。ゲームボーイ。アドバンス、小さいジャンバー、吸い込みの悪いコードレス掃除機。で吸われた埃の隅にある思い出たち。ちぎれたもの。ちぎれた時。喚いた日。仲が良かった人。心が震えた夜。初恋、純愛、愛情がこもった言葉の羅列。LINEの履歴。カレンダーに追加した好きな人とのデートの予定)
僕は今日も自分の話をする。誰か聞いてくれますか?
(地下鉄が目の前で行った。思わず地下鉄を殴ろうとして辞めた。僕はもう大人だからね。)
おわり。
焦る、爆ぜる、てかれる。 木田りも @kidarimo777
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