第5話

「マグダ姉様ではどのような家庭になるでしょうか?」

「マグねーしゃ、えーゆーしゃとなかよし!」


 ロレッタの話に飽きたのか、カンパニュラとテレサが二人で話を進める。


「飽きたって」

「違うですよ! カニぱーにゃは全員に気が遣えるお利口さんなだけです! 決してあたしに飽きてはないですよ!」


 ロレッタの無駄なあがきはスルーするとして、マグダと家庭を持つとか……新妻が子供みたいなもんだろ、それ。


「マグダが相手じゃ、子供が云々の前に結婚相手が子供みたいなもんだろうが」

「ヤシロ。それは、君もそうだからね?」

「そうですね。ヤシロさんは大きな子供さんみたいな時がありますし」


 そう思うのなら、子供にするようなスキンシップをもっとプリーズ!

 ハグとか、添い寝とか、混浴とか!


「……ヤシロ」


 いっそこのまま子供キャラ路線で攻めてやろうかと画策していると、マグダが俺の目の前に人差し指を突きつけた。


「……十年後のマグダは、ナタリアとノーマを足して2をかけたくらいの色気を纏っている」

「マジか!? 凄まじいな!」


 ナタリアとノーマの色気を足して二倍にするのか。

 歩くだけで男がごっそり釣れそうだな、それは。

 身に纏えればな。


「……ヤシロも、マグダの色香にメロメロになること請け合い」


 マグダの色香にメロメロに、ねぇ……



☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡


ヤシロ「うぃ~ひっく、酒もってこ~い!」


☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡



「……それはベロベロ。そーゆー小ボケは、今いらない」


 つれないヤツめ。

 こーゆー小さいベタな笑いこそ、案外大切にしていかなきゃいけないところなのに。


「マグダさんとヤシロさんのお子さんなら、きっと他の誰よりも甘えん坊さんになっちゃうでしょうね」


 見てきたかのように頬を緩めて、極上に可愛らしい子供を想像していそうなジネット。

 きっと、こんな想像が脳内を駆け巡っているのだろう。



☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡


マグ子「ま~ま、まま~! おっぱい~!(←ヤシロ遺伝子)ぱ~ぱ、ぱぱ~、頭ナデナデして~!(←マグダ遺伝子)」

マグダ「……あっふぅ~ん、仕方のない子ね」

ヤシロ「お前は、いくつになっても乳離れも父離れも出来ないな」


☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡



「うまいこと言わないでいいですよ、お兄ちゃん!?」

「なんでマグダは、自分の子供相手に色香を振りまいてるのさ……」

「つーか、色気の認識がナタリア寄りだな。そういうことじゃないんだけどなぁ、色香って」

「でも、お子さんは可愛かったですね。ついつい甘やかしてしまいそうでした」

「じゃあ、問題があるのは両親、つまりお兄ちゃんとマグダっちょってことですね」


 ロレッタが酷いことを言う。

 俺たちのどこに問題があるというのか。


「では、私の場合はどうなるでしょうか?」


 と、カンパニュラが自ら話題を振ってくる。

 しかし、カンパニュラの十年後か……


「カンパニュラは十年後でも、まだ子供を持つには早いだろう」

「いえ、成人とともに授かる方もいらっしゃいますので、早過ぎるということはないと思いますよ。さすがに、姉様方のお子様たちのように元気に走り回るような年齢ではないでしょうけれども」


 そんなことを言って、カンパニュラが未来の子供を想像する。



☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡


カンパニュ子「あー、ったーぁ!」

カンパニュラ「うふふ。元気いっぱいですね。このまま、健康にすくすく育ってくださいね、ヤーくん」

カンパニュ子「あーっ!」


☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡



「ちょっと待て!」


 カンパニュラの妄想を止める。


「……なんで、赤ん坊が『ヤーくん』なんだよ?」


 俺、もう一回若返って転生するのか?


「私たちの子供の名前は、ヤーくんから取って『ヤシロソン』と名付けましたので『ヤーくん』なんです」

「『ジェファーソン』とか『リチャードソン』的なヤツ!?」

「カンパニュラさん。お子さんを『ヤーくん』と呼ぶなら、ヤシロさんのことはなんと呼ぶんですか?」

「『ヤー様』です」

「微妙なレベルアップしたな……」

「お気に召しませんでしたら『ヤンナ様』でもいいですよ?」

「なら素直に旦那様って呼んでくれるかな!?」


 なんだ『ヤンナ様』って!?

 嫌なのか!?

 嫌なヤツなのか!?


「あい! あいあい!」


 カンパニュラが終わったところで、テレサが元気よく手を上げる。






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