第4話 完結編
第十四章 一冊のノート、一縷のノード
――――第十四章 一冊のノート、一縷のノード。
恋美はいてもたってもいられず、空くんが入院している病院へお見舞いに行くことにした。病室のドアをノックすると、中から優しい声が聞こえた。
「どうぞ」
ドアを開けると、ベッドに横になっている空くんの姿があった。顔色は少し悪いけれど、意識ははっきりしているようだ。恋美はドアを開けた。
「空くん、大丈夫…?」
ベッドに横たわる空くんの傍らには、なんと玲良が立っていた。玲良は手に一冊のノートを持っている。
「あっ、仁村さん、こんにちは」
と玲良はにこやかに言った。
空くんは少し驚いた表情で恋美を見た。
「恋美ちゃん、来てくれたんだ。ありがとう」
「うん……あの、具合はどう?」
と恋美は玲良が気になる中、尋ねると、空くんは少し顔をしかめた。
「まだ、時々ズキズキするんだ。原因は分からないみたいだけど……」
その時、玲良が優しく言った。
「空くん、今日までの分の授業をいろいろまとめてみたの、これで少しは勉強も遅れずに済むかなと思って」
「え……」
恋美は玲良の言葉に目を丸くした。
「うん。空くん、入院しちゃって困ってるだろうなって思って。私、ノート綺麗に取る方だから」
「……これ、すごい……本当に授業を受けてるみたいな気がする……。あ、数学の田中先生、絶対ここでギャグ挟んだでしょ!」
「そうそう!」
二人は楽しそうに笑い合った。
「これ、すっごい助かるよ……なんてお礼したらいいのかわからないや……本当にありがとう。」
「お礼はいっしょに高校通ってくれることでいいよ。そのために、少しでも力になりたいなって」
「俺、絶対受かってみせるよ。ありがとな」
「私も、空くんよりも合格可能性高いけど、油断してられないなぁ~」
恋美は胸が締め付けられるのを感じた。玲良が、空くんのことを心配して、わざわざノートを届けている。共通の目標のために頑張り合える仲間になっている。その優しさや境遇が、今の恋美には痛いほど突き刺さり嫉妬を覚えた。それだけではなく、玲良が空くんに好意を持っているのではないかという疑念も湧いてきた。
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