くもりくらぶ
@abcdic
第1話くもりくらぶ
「海だね」
「海だわ」
「海よね」
放課後、いつものように私たちは浜辺に来てた。
海を見るのが好きな3人がいつのまにか来るようになってた。
海は好きだけど日焼けは嫌
だから集まるのはいつもくもりの日だけ。
ベンチに座って、最近のドラマのこととか、
クラスで一番かっこいい男子は誰か?とか、
なんとなく話して、なんとなく時間を過ごす。
「ねえ、優希、私たちもうすぐ二年生だね。優希はもう進路決まってる?」
海を見ながら晴美は私に話しかけてきた。
「進路かあ… なんにもわかんないな。」
私も海を見ながら答えた。
いつものように海を見つづけてる私達を、強めの風が通り過ぎていく
…
「晴美、この自転車借りるね。」
私は晴美の自転車のハンドルを持ちペダルに足をかける…
「後ろに乗せてよ!」
すると美沙がいきなり自転車の後ろに飛び乗ってきた。
「あまり遠くまでいかないでね。」
晴美は立ち上がってそう言い、私たちを見送る。
波が押し寄せる浜辺の上を2人乗りの自転車がゆらゆら進む。
自転車は2本のラインを無限に伸ばしたかと思えば、たまに来る大きめの波にかき消される。
「いつまでもこうやって3人でいれたらいいのにねー。」
「何言ってるのー? 風が強くて聞こえないわ~。」
美沙は風に巻き上げられる長い髪をまとめながら聞き返した。
「うーん、なんでもなーい。」
今がずっとつづくわけなんてない。
将来のこと、考えたって全然ぱっとしない。
考えないこともないけれど、わからないことを想像して不安なんて感じてたくない。
まるで、今日の天気のような、
そんな中途半端な気分が、今の私にとってはちょっとだけ心地いい。
「天気は今日も曇りだねー」
そう叫んで勢いよく自転車をこいでみた。
少しの間だけ風が止み、自転車はスピードをあげて、
笑いながら手を振ってる晴美の姿は少しずつ小さくなっていった。
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