ぼくの冒険譚

吉高 都司 (ヨシダカ ツツジ)

第1話

 おばさんが、今度の夏休みに遊びに来る。

 この前生まれた赤ちゃんをつれて遊びに来るという。

 おばさんは、僕のお母さんと姉妹で、僕のお母さんがお姉さんで、おばさんが妹って言っていた。

 僕のお母さんは昔から、お母さんで、おばさんのお姉さんと聞いてもなんだか不思議な感じがする。

 僕の隣に住んでいる姉妹は、お姉さんが僕の同級生で、妹が、幼稚園に通っていて、幼稚園の妹が大人になって、赤ちゃんを連れてくるようなものなのだろうか?

 じゃあ、おばさんも幼稚園の頃があったってこと?

 お母さんも、僕の同級生の頃があったってこと?

 じゃあ、赤ちゃんはいつ生まれてくるのだろう?

 考えると、あたまがこんがらがっちゃう。

 やっぱり不思議。

 でも動画で送ってくれた赤ちゃんはとっても可愛い。早く会いたいな。

 

 夏休みに入り、おばさんが赤ちゃんを連れてやってきた。ほっぺが、ぷにぷにでとっても可愛い、ウーとかダーとか言っている。

 まだしゃべられないんだ。手足をバタバタさせて、僕をじっと見て時々笑うと、頬ずりしたくなっちゃう。

 それに、おばさんのオッパイを飲んでいるところとか、あやしている、おばさんの顔はとっても、とっても優しいお母さんに似ている。


 僕もあかちゃんが欲しいな、と、おばさんに言うと、おかあさんに頼めば?と言ったので、お母さんになんて頼めばいいのか分からないよ。

 というと、おばさんは笑いながら、お母さんにがんばって。

 と言っていた。何を頑張るんだろうと不思議に思うと、お母さんと、おばさんは、笑いあっていた。


 なにがそんなにおかしいのだろう。


 ある日、おばさんと、赤ちゃんはお昼寝していたので、僕も赤ちゃんの隣で寝ることにした。起こさないよう、ソーっと隣に近づくと、ピンポーンと玄関のインターホンが鳴った。

 お母さんは、お父さんと買い物に行っている。お留守番の時は、出ちゃダメって言われているけど、おばさんがいるから大丈夫。

 はーいと言って、玄関の戸の前で、どちら様ですか?と問いかけると、八百屋です、配達を間違えたので引き取りに来ました。

 と言っていた。じゃあ、と言って、玄関のドアを少し開けると目の前に知らないおじさんが、八百屋の帽子を目深にかぶっていて、開けてくれてありがとう、と言うとスルリと家の中に入って、階段を音もなく上って、おばさんが寝ている部屋へ入っていった。僕は慌てて二階に駆け上がり、同じく部屋に行った。

 すると、アッ、という間に赤ちゃんをくるんでいる、おくるみを抱えると又、スルリと玄関から表にあっという間に飛んで行った。おばさんはぐっすり寝ている。


 赤ちゃんが奪われた。


 追いかけなきゃと思い、僕は、家の鍵と、剣道の昇級試験に受かったお祝いに、お父さんに買ってもらった新品の竹刀を、ベルトの腰の位置に差込み、追いかけるため、表に出た。

 玄関前には、お隣に住んでいる、同級生の女の子とその妹が縄跳びの練習をしていた。同級生の女の子は僕が慌てて、外に飛び出してきたものだから、どうしたの?

 と声をかけてきた、僕は知らない八百屋のおじさんが、おばさんの赤ちゃんを奪って飛び出して行った、見なかった?

 というと、確か家から出てきたおじさんは、トラックに乗ってあっちに走っていったと、その方向を指さした。

 僕は、愛車の青い自転車にまたがり出発しようとすると、私も一緒に行く、と同級生は真っ赤な自転車に乗り、僕と一緒にその方向に走り出した。

 ところが、妹も私も行くといって、三時のおやつに食べようと用意していた、お菓子を詰め込んだリュックサックを背負って、コマ付の真っ赤な自転車で後をついてきた。


 僕は、同級生の女の子が、指し示した方向に一生懸命自転車を走らせた。

 妹がいるから、あまりスピードは出せないけれど、とにかくその方向に走らせた。

 そのうち、山の方にむかっているのか、海のほうにむかっているのか、脇目も降らず、走っていたのでどこをどう走っているのか、全然わからなかった。


 気が付くと見たことのない、来たことのない、全然知らない村にきてしまっていた。畑や、田んぼや、林、そして遠くに森が見えた。

 ここはどこなんだろう。同級生と妹を見ると、少し不安げな顔をしていたので、ギュッと竹刀を掲げ、この前剣道の昇級試験に合格したから大丈夫。と言って。面の素振りを何回か披露した。ちらっと、同級生の方を見ると、クスッと笑って。

 ニッコリほほえんでいた。妹の方は、何も感じないような、じっと見ていただけだったので、なんだか恥ずかしくなって十回くらい素振りをして、また、腰のベルトに差し直した。


 池のほとりに差し掛かると、坊ちゃん、嬢ちゃんと僕たちを呼び止める声がした、池のほとりから、ドジョウさんが、池の中から顔を出して、よびとめた。

 坊ちゃん、嬢ちゃんそんなに急いでどこへ行くんだい、と。

 ドジョウさんが声をかけてきた。僕は、赤ちゃんが、連れ去られたこと、いま、姉妹と共に追いかけている事を話すと、その八百屋の事を教えるから、頼まれてくれないか、と言ってきた。

 実は、ここにいるこのドングリ坊やが、そこの山から遊びに来たのはいいのだが、帰れなくなって、泣き出して、こまっているんだ、と。

 そこで、あの山に寄ってもらって、ドングリ坊やを山に返してほしいんだ、と言いました、教えてくれるのなら、と言うと、場所を教えてくれたので、どんぐり坊やを、ポケットにしまい、出発した。

 あの山だね、と聞くとドングリ坊やは、うなずき、さっきまで泣き顔がウソのように笑顔になった。


 山の中に入り、しばらく行くと、クマさんとばったり出会った。

 クマさんはいいました、こんな人里離れた、山奥は物騒だから、早く山を下りなさいと言いました、でもドングリ坊やを、山に返す約束したので、もう少しいかなくては駄目なことを伝え、暫く進むと、後ろから、すごい勢いでクマさんが追いかけてきた、怖くなって竹刀を構えると、クマさんは僕たちの手前で急ブレーキをかけ、誤解だよ、と言って、悲しそうな眼をしました。

 手には真っ赤なシュシュを一つ持っていました。

 あっと言いて、お姉さんは妹の頭を確かめると、彼女のシュシュが一つ無くなっていました。クマさんは落とした、シュシュを届けてくれたのです。

 シュシュを受け取ると、クマさんは、それでも、とっても悲しそうな顔で来た道をのっしのっしと歩いていきました。

 僕も姉妹も、なんだか悲しくなって、クマさんを追いかけ、ごめんなさいと謝り、そして、シュシュを届けてくれたことのお礼と、謝る意味を込めて、はちみつの飴玉を差し出しました。

 こんなことで、クマさんを傷付けたことは変わらないけれど、せめてもの思いを伝えたいから、というと、クマさんは、私も君たちに急に迫ったらびっくりするよね。こっちこそごめんね。

 と、言い合いいました。

 そして、お互いさよならを言って、別れ、ドングリ坊やを山の中に帰し、ドジョウさんに教えてもらった、方角に自転車を走らせました。


 山を抜け、海に出ると、港では、カモメの海兵が整列をして、海の上で訓練をしていました。そうだ、鳥なら高い所から、色んな所を見ることができるから、もっと詳しいことが分かるかもしれない、と思って。

 近づいて、聞いてみることにしました。カモメたちは、忙しく、右に左に飛んだり跳ねたり、海に潜ったりしていました、近づくと、どうしました?とホイッスルを咥えた、カモメの海兵さんがどのタイミングで声をかけようか、迷っている僕たちを見て声をかけてくれました。

 赤ちゃんが連れ去られたことを話すと、それは大変と、ホイッスルを吹くとたくさんのカモメの海兵さんが集まってきました。

 そこで、僕の話を聞いて、誰か、知っている者は案内するように。と、みんなに言ってもらいました。

 すると、その中の一羽が、私は知っております、と羽根を上げてくれました。それでは、案内するようにと、そのカモメにホイッスルを咥えたカモメは言い、その案内してくれるカモメを残し、他のみんなは元に戻りました。

 さあ参りましょうと、かもめは高く低く僕たちが見失わないよう、旋回しながら、案内してくれました。


 しばらく行くと、もっと大きな港に出ました。

 大きな船が一杯繋がっている港を横切ろうとしたとき、大きなブカブカのコートを頭まですっぽりかぶり、大きな帽子をかぶった、黒い影の人が、僕たちの前に立ちふさがりました。そして大きな手で、姉妹を手を取ると、友達になろう、と無理やり引っ張りました。

 突然の出来事で、僕は、自転車を飛び降り、持っていた竹刀を構え、なにをするんだ、手を離せ、と叫び構えたまま近づくと、赤い靴を履いた女の子を探していたんだ。と、訴えるような、声でいいました、姉妹は、離して、と、手を解こうとしましたが、大きな手でつかまれているのでびくともしません。

 やっと探せたんだ、赤い靴を履いた子を。

 と再び訴えるように、黒い影の人は大きな声で言いました。僕は構えたまま、にじり寄りこういいました、嫌がっている女の子を無理やり友達にできるもんか、と。じゃあ、ぼくは、どうしたらいいの。

 と黒い影の人は問いかけてきました。ずっとずっと一人ぼっちで、この港で、ずっと、ぼくのこの大きな客船で、ひとりで。

 鳴き声で、いいました。だれも、ぼくのともだちになってくれない。そして、姉妹の手を離すと、大きな声で、泣き出しました。

 ひとしきり、泣いた後で、僕は悲しくなりました、でも、僕の大切な人を困らせることは絶対許さないと思い、いいました。ここに来るまで、色んな事があったことを。そして、あなたが、自分がつらいと思ったことを、人にもつらい思いをさせようとしたことを。

 ここには、港だけじゃない、山や、池や、色んな所があることを。僕は、赤ちゃんを取り戻すため、頑張っている。

 世界はここだけじゃない、君も大切なものを、頑張って、手に入れようよ。そうすると黒い影の人は、もう、こんなことは、しません、ごめんなさいと謝りました。


 また、暫く自転車を走らせると、あの丘だよとカモメの海兵さんは言い、頑張ってと言い残し、分かれた。丘の上に行くと、一面バラの花が咲いていて、そのバラの園の真ん中で、一人の人が何か作業をしていた。

 僕たちは、その人のそばまで行って、赤ちゃんを連れ去ったひとの事をたずねた、作業をしていた人は手を止め、こちらを向き、その人の事なら知っているよ、と言い、僕たちを見た。

 やあ久しぶりだね、と姉妹の方に声をかけた、僕が姉妹に知り合いなの、と言うと、知らない人、と言い僕の後ろに隠れた。

 そうだね、もう忘れているかな、と言いながら、作業をしていた人は近くにあるバラを手に取り僕たちに見せた。そのバラの花はみるみる大きくなり、その開いた花弁の真ん中には女の赤ちゃんがスヤスヤと寝ていた。

 僕と、姉妹は目を丸くしてびっくりしていると、女の子はこうやってバラの花から生まれ、男の子はキャベツから生まれるんだ、そこの姉妹もついこの間、このバラの園からコウノトリに運んでお母さんの元に運んで行ってもらうんだ。

 と言うと。どこからともなく、コウノトリが飛んできて、バラから生まれたばかりの女の子をおくるみに包み、大きく羽ばたくと、空高く舞い上がり、飛んで行った。


 よく見ると、何匹も、何匹も、バラの園のあちこちから飛び立っているのが見て取れた。飛んで行った先にはそれぞれ、お母さんの元に行くんだと思い、今頃心配しているかな。と、お母さんの事を思い出した。

 バラの園の作業していた人はその八百屋の人は、あの丘のキャベツ畑の人じゃないかと教えてくれた。僕と姉妹はその丘を目指し自転車を走らせた。


 暫く行くと、あのトラックが留まっているのが見えた、近くで、誰かが、こちらを見て、慌てて走っていくのが見えた、あの八百屋さんだ、待て。

 と言って、一生懸命自転車で追いかけた。やっと追いついたところで、僕は、おばさんの赤ちゃんを返せと飛び降り、腰に差していた、竹刀を構えた。八百屋さんは待ってくれ、と言い息を切らしながら、鳥笛を吹いた、しばらくすると知らない間に、大きな鳥が、嘴の黒い赤い目の白い体の端が黒い、コウノトリがキャベツ畑一面に降り立っていた、その中の一匹が僕たちを見咎め。

 近寄ってきた。ここに何用で来たのか、たずねてきた。ぼくは、おばさんの赤ちゃんを返してほしいというと、周りにいた、コウノトリが一斉に、僕たちを取り囲んだ、口々に返せるものか。かえれ。

 何しに来た、とか言葉を浴びせた。

 でも勇気を振り絞り、大切な人のためにここに来た、絶対赤ちゃんを返してもらう、と、もう一度竹刀を構えた。すると、コウノトリたちは、カッカッカッとくちばしを一斉に鳴らし始めジリジリ僕たちに詰め寄ってきた。

 乗ってきた自転車を囲いにして、その中に姉妹を避難させその前に立ちはだかった、ジリジリとコウノトリが もうすぐそこまでの距離になった時。

 どうしたのですかと。ひと際、大きく美しいそのコウノトリが舞い降りてきて、地上に降りた瞬間真っ白いドレスをまとった女性となった。


 どうしたのですか。

 と再度問いかけると、八百屋さんが、その女性に何か耳打ちをした、その間も僕は、竹刀の構えを解くことはなかった。

 そして、それは、本当ですか、とその耳打ちした八百屋さんに問いかけ、やがて、居ずまいを正し、改めて、こちらに向き直り、あなたのおばさんの赤ちゃんをこのものが。

 奪ったと言うのですか。

 と僕たちに問いかけた。そうだ、だから、自転車に乗って、後を追いかけてきた。

 おばさんの赤ちゃんを返せ、と言うと。群衆のずっと奥の方から、お前は、ノコノコやってきやがって、何の用だ。と大きな声で、叫びながらコウノトリが飛んできた。女性の近くに降り立つと、女性に、こいつは、赤ちゃんを運んでいる八百屋さんを追い掛け回していたんだ。

 と訴えると。

 僕は、すかさず。嘘だ、玄関から、入ってきて、寝ているおばさんの横で寝ている赤ちゃんを奪ったんだ、返せ!と言うと、この前、お父さん教えてもらった、上段の構えに移り、そのコウノトリと八百屋さんににじり寄った。

 コウノトリは少したじろいだが、人間ごときが・・・!といったところで、その女性が割って入りおやめなさい!と。近くにいた数匹の別のコウノトリが、代わるがわる、女性に耳打ちをし、そのたびにうんうんと頷いて、そして、今回の事の顛末を説明してくれた。

 今回、おばさんの赤ちゃんは本当は、僕のお母さんの赤ちゃんの順番だった。

 ところが、キャベツ畑の八百屋さんの手違いで、姉妹であるお母さんの妹さんのところに、つまりおばさんのところに間違って、配達の手配をしてしまった、そこで、八百屋さんは間違いを挽回するため勝手に赤ちゃんを奪いに行ってしまった、おかげで大変な迷惑をかけてしまった。

 この赤ちゃんに関連する一切の記憶を消して、順番通りお前のお母さんの元に配達して、おばさんのことは無かった事にするから、許して下さい。

 といって。

 深々と謝罪した。女性だけでなく、八百屋さんと、コウノトリ一同。皆、謝ってくれた、暫くして、ゆっくり上段の構えをといて、腰のベルトに竹刀を挿すと、姉妹の方を振り返り、おばさんの赤ちゃんは、おばさんの赤ちゃんでなくてはだめなんだ、みんなかけがえのない人なんだから、ぼくは、・・・、そこまで言うと何だかぽろぽろ涙が溢れてきた。

 だから、そのまま赤ちゃんはおばさんの元に帰してあげて、と言うのが、精一杯だった。僕の隣の同級生は何も言わず、ギュッと手を握ってくれた。

 妹の方は、じっと見上げてみつめてくれていた。

 君のお母さんではなく、おばさんの赤ちゃんでいいのかい。

 と女性はすまなさそうに言った。


 コウノトリの後を付いて行けば帰ることできる、八百屋さんはそう言うと飛ぶ準備をしていたコウノトリは、羽をばたつかせて、直ぐにでも飛び立つ準備をしていた、バサッとはばたくと、僕たちの上を旋回して待っていた、女性はお母さんによろしくね、と付け加え、見送ってくれた。

 帰り道はずっと上を向いて、コウノトリから、はぐれないよう自転車を一生懸命漕いでいた。途中、友達のできた、黒い影の人は、バイバイと手を振ってくれた。

 港では、カモメの海兵たちが、整列してバイバイしてくれた。

 森では、クマさんが、はちみつをなめながら、ドングリ坊やと、バイバイしてくれた。

 池のほとりには、ドジョウさんが、尾びれをフリフリ、バイバイしてくれた。

 そうして、いくつかの町を通り抜け、やっと僕の家に着いた頃には、日が傾き、宵の明星が、一つキラキラ輝いていた。


 姉妹に、今日はありがとうと、お礼を言ってお別れをした。

 同級生は、いつかまた、二人で冒険しようね。

 と言って、お別れの挨拶をして、二人とも、家の中に入っていった。同時におうちの明かりが灯り、家の中で姉妹の話し声と、お父さんと、お母さんのおかえり、という声が、聞こえた。

 僕は急にお父さんお母さんの声が聞きたくなって、急いで家の中に入った。

 家は真っ暗で、そうだ、赤ちゃんだ、と思い出し、おばさんが寝ている部屋のドアを開けると、そこには、おばさんの隣で、すやすやとおくるみのまま寝ている赤ちゃんがいた。ベランダでは、嘴を鳴らしながらコウノトリが、羽をはばたいていた。嘴の音と、羽ばたきの音で、おばさんは、うーんと言って、目をこすりながら、起き出した。

 すると同時に、コウノトリは、近々また来るからな。今度は間違えずに。

 と言って。飛び去ってしまった。


 ベランダの方をじっと見ていた僕に、どうしたの、あらやだ、こんな時間。姉さんにお夕飯頼まれていたんだっけ、と言って立ち上がると同時に、お母さんと、お父さんがただいま、と帰ってきた。

 ぼくは、今日あったことを、おばさんはもちろん、お父さんやお母さんに話そうと思って、玄関に急ぎ足で、今日すごいことがあったんだよ、と。


 言いかけた。でも、その前にお母さんはとっても笑顔で、お父さんは顔を真っ赤にしながら、おめでとう、お兄ちゃんになるんだよ、といった。

 少し後から、赤ちゃんを抱いたおばさんがやってきて、やっぱり!おめでとう!と言って、笑いあっていた。

 お兄ちゃんになるんだ、僕、と思うと、三人が笑っていたので、余計になんだかうれしくなった。

 今日あった出来事を、話そうとしたら、あら。

 これは何が付いてるの、と、おばさんは僕の背中にひっかかっていた、大きな白い羽をつまみ、僕に差し出した。そうだ、あのね、今日ね・・・・。

                                           おしまい


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