5.夏休みにはウォーターボトル
第46話
「あっついよー、奈々ちゃん。どうしてこんなに暑いの。」
「8月だからってそれ以外の理由ある?」
連日30度を超える猛暑を感じさせない奈々ちゃんのひんやりとした対応に、私の頭も少しだけ冷やされた。
「分かってるけどさ。せめて向日葵が綺麗に咲くためだよ、とかそういうこと言ってくれてもいいじゃんかあ。」
「そんなセリフ思いつくのすみれちゃんくらいだよ。」
せっかくの夏休みにも関わらず、受験生である私たちは夏期講習を受けるためにほとんど毎日学校に通っている。
今日も午前中の古文の授業を終えて教室に戻ると、いつもの3人も同じように教室に集まっていた。
「潤、さっきのプリントの第三問解けた?Xで置き換えたんだけど、綺麗に展開出来ない。」
「ん、出来たよ。ちょっと見して。」
奈々ちゃんが苦戦している数学の問題は、きっと私だったら潤君にあと10回は説明してもらわないと理解できないのだろう。
普段から穏やかな潤君だけど、彼が一番優しい声を出すのは奈々ちゃんの名前を呼ぶときとか、奈々ちゃんに話しかけるときだ。
私はもう1年くらい前からこの発見に胸をときめかせていて、でもそれを誰とも共有出来ずにもどかしい気持ちでいる。
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