三つの世界を繋ぐ黒猫の物語

最新話までの感想を書かせていただきたいと思います。

まず、人視点からの物語は全編を通しての、中心人物(猫)であるクロを中心に現実社会の出版業界の厳しい現実、インフルエンサーマーケティングの威力、社内政治の複雑さ
が描かれており、修一の内面的成長と御船書房の経営回復が並行して進む構成がとても素晴らしかったです。

最後にクロの死というやりきれない出来事を含めながらも、最終的には希望に満ちた結末を迎える構成は見事でした。「人と人との繋がり」「小さな存在が与える大きな影響」「日常の中にある幸せ」といったテーマが、押し付けがましくなく自然に伝わって来て、涙が出そうになりました。

泥棒猫視点では、打って変わってファンタジーになりますが、クロの前世の記憶の追体験といった感じで、リーンやビア等の魅力的なキャラが出てきますが、これも伏線の一つと言った感じになるのでしょうか。なるほどと思うところがいくつもあり、とても楽しめました。

そして、猫視点!
クロが転生して、人視点での物語をクロ視点で体験する物語ですが、クロはこう思ってたんだなと、全く新しい視点からの物語に、全く飽きが来ません!

前世の記憶を持つ猫という設定を活かして、愛と贖罪をテーマにした心温まる物語に仕上がっており、特に、最終的に自分の幸せよりも他者の幸せを選ぶ成長が感動的です。
現代を舞台にした転生もので、ここまで自然に異世界要素を織り込んだ作品は珍しいかなと思います。作者様の構成力の高さを感じます。読み終わった後に、温かい気持ちになれる素晴らしい作品だと思います。

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