放課後の散歩
@miteno
放課後の散歩
放課後の教室は、不思議と静かだった。
誰もいないはずなのに、どこからか声が聞こえてくるような気がした。それは、おそらく私の想像なのだろう。でも、その声は、まるで誰かが本当にそこにいるかのように、私の耳に届いていた。
ブックオフまでの道のりは、今日も変わらなかった。コンビニの前で、いつもと同じように信号待ちをした。郵便局の角を曲がると、そこにはいつもの風景が広がっていた。でも、その風景は、今日は少し違って見えた。
道端に咲いていたタンポポが、いつもより黄色く輝いていた。風に揺れる姿が、まるで私に手を振っているようだった。私は、思わず立ち止まって、そのタンポポを見つめた。普段は気にも留めないような小さな花が、今日は特別な存在に思えた。
ブックオフの看板が見えてきた。いつもと同じ赤い看板が、夕陽に照らされて、少しオレンジ色に染まっていた。私は、いつもよりゆっくりと歩を進めた。今日は、きっと何か特別な本と出会えるような気がしていた。
店に入ると、いつものように110円棚の前へと向かった。棚には、先週見た本も、新しい本も、混ざり合って並んでいた。私は、一冊一冊、丁寧に手に取っては、また棚に戻していった。本の表紙に触れるたびに、その本が持つ物語が、私の指先から伝わってくるような気がした。
「この本は、誰が読んでいたのだろう」
古い文庫本を手に取りながら、私は考えた。表紙には、小さな折り目がついていた。その折り目は、おそらく前の持ち主がつけたものだろう。私は、その折り目を指でなぞりながら、前の持ち主のことを想像した。どんな人が、どんな思いでこの本を読んだのだろう。
ブックオフを出ると、空はすでに夕暮れの色に染まっていた。西の空には、オレンジ色の雲が浮かんでいた。その雲を見ながら、私はダイエーの方向へと歩き始めた。
ダイエーまでの道のりは、いつもより長く感じた。でも、それは心地よい長さだった。今日見つけた本のことが、頭の中を巡っていた。その本は、まるで私の心の中の何かを表現しているようだった。
ダイエーに着くと、私は雑貨店の文具コーナーへと向かった。そこには、色とりどりのボールペンが並んでいた。私は、一本一本、手に取っては、キャップを開けてみた。インクの色が、私の指先に染み込んでいくような気がした。
試し書き用の紙には、私の字が並んでいた。どのボールペンも、それぞれに特徴があった。太い線を描くもの、細い線を描くもの、滑らかに書けるもの、少し引っかかるもの。私は、それらを試しながら、自分の好みを探っていた。
そして、ついに見つけた。ブレンのボールペン。そのペンは、私の手にぴったりと合った。インクの出も滑らかで、私の字が、いつもより美しく見えた。私は、そのペンを手に取りながら、自分の心の中の変化を感じていた。
「これにしよう」
私は、そのペンをレジに持っていった。レジの店員さんが、丁寧に包装してくれた。その包装紙は、私の心の中の何かを包み込んでいるようだった。
帰り道は、いつもより長く感じた。でも、それは心地よい長さだった。今日買った本とペンのことが、頭の中を巡っていた。それらは、まるで私の心の中の何かを表現しているようだった。
家に着くと、今日買った本を開いた。表紙の折り目は、私の指でなぞった跡で、少し色が変わっていた。私は、その変化を見つめながら、今日の一日を振り返った。
放課後の教室の声、道端のタンポポ、ブックオフの本、ダイエーの文具店。それらは、すべて私の心の中の何かを表現していた。そして、その何かは、今日という日を特別なものにしていた。
私は、新しいブレンのペンで、今日のことを書き留めた。文字が、私の心の中に染み込んでいくような気がした。それは、まるで今日の一日が、私の心の中に染み込んでいったように。
放課後の散歩 @miteno
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます