恐竜

ヤマシタ アキヒロ

恐竜

「恐竜なんて、ホントにいたのかなぁ」


コウちゃんは大好きな図鑑をめくりながら、そう独り言をいいました。


ティラノザウルス、ステゴザウルス、ブロントザウルス、トリケラトプス……


恐竜の存在が、化石の発見によって証明されることは、コウちゃんもよく知っていました。


しかし心の中で、その栄えた様子をうまく想像できなかったのです。


「でも、サイやカバだって、恐竜みたいだし」


知っている動物の中に、その名残りを感じて、コウちゃんは心踊らせるのでした。


いっぽう六百年後のネオ・トーキョーにて。


「人間ナンテ、ホントニイタノカナァ」……


宇宙少年のキルル君は、VRスコープを覗きながらそうつぶやきました。


ネオ・トーキョー、ネオ・オオサカ、ネオ・ヨコハマ……


人間の存在が、その廃墟の復元によって証明されることは、キルル君もよく知っていました。


しかし今はだれも、人間のかつての繁栄を知る者はいません。


「動物パークノ猿ダッテ、人間ミタイダシナ」


その毛むくじゃらな動物を見て、キルル君はひとり夢を広げるのでした。


                          (了)

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