鮮血ソルティナイト[完]

名霧ゆと

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第1話



声が聞こえる。

それは狂気を含んだ耳障りの悪い声。



焚き火をして、その真ん中に吊るされたのはまだ生きている人間。炙られて出てきた汁を周りの奴らが順番に飲み干す。




皆はそれを《神愛の儀式》と呼んだ。




炙られる女の悲鳴が聞こえる。痛い痛いと叫ぶ言葉が次第に聞き取れないものに変わる。



もう言葉ではない。

人生に対する懺悔に満ちた声。




周りの奴らはそれを笑顔で見守っている。誰一人、その行為に可笑しいという疑問を抱くことはなかった。



焼き終わった肉の塊は、大きな木で出来たテーブルの上に置かれる。



丸焦げで、溶けたような体はもう原型を留めてはいないのだ。



それに容赦なくノコギリを差し込み、前後に押して引いてを繰り返す。



何もおかしいことはない。

それが当たり前なのだから。



綺麗に削ぎ落とされた肉は皿に盛り付けられた。ソースとしてかけるのは、近くの木になっている実の汁。



絞ると甘味を含んだ液が出るのだとか。



そこに自らの涙、腕にナイフで切り込みを入れて垂らした血液。それを一口だけ咀嚼する。



残りはだいぶ多いが、それは山の中に住む動物たちの餌となる。



その儀式になんの意味があるのか、それは誰もが知っていながら、誰一人言葉にはしなかった。




《神愛の儀式》は悪夢だ――


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