鮮血ソルティナイト[完]
名霧ゆと
episode 0
第1話
声が聞こえる。
それは狂気を含んだ耳障りの悪い声。
焚き火をして、その真ん中に吊るされたのはまだ生きている人間。炙られて出てきた汁を周りの奴らが順番に飲み干す。
皆はそれを《神愛の儀式》と呼んだ。
炙られる女の悲鳴が聞こえる。痛い痛いと叫ぶ言葉が次第に聞き取れないものに変わる。
もう言葉ではない。
人生に対する懺悔に満ちた声。
周りの奴らはそれを笑顔で見守っている。誰一人、その行為に可笑しいという疑問を抱くことはなかった。
焼き終わった肉の塊は、大きな木で出来たテーブルの上に置かれる。
丸焦げで、溶けたような体はもう原型を留めてはいないのだ。
それに容赦なくノコギリを差し込み、前後に押して引いてを繰り返す。
何もおかしいことはない。
それが当たり前なのだから。
綺麗に削ぎ落とされた肉は皿に盛り付けられた。ソースとしてかけるのは、近くの木になっている実の汁。
絞ると甘味を含んだ液が出るのだとか。
そこに自らの涙、腕にナイフで切り込みを入れて垂らした血液。それを一口だけ咀嚼する。
残りはだいぶ多いが、それは山の中に住む動物たちの餌となる。
その儀式になんの意味があるのか、それは誰もが知っていながら、誰一人言葉にはしなかった。
《神愛の儀式》は悪夢だ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます