電波に乗せた思い過去の星が未来を照らす
Algo Lighter アルゴライター
第1話 目覚め
美咲は、自分の中に眠っていた情熱が再び目を覚ましつつあるのを感じていた。
ポッドキャスト「星空の向こうで」を聞いた翌朝、彼女は早起きをして机に向かい、久しぶりにペンを握った。昨夜書き始めた文章を見返すが、そのわずかな進捗に自信を持つことはできなかった。
「これが、本当に意味のあるものになるのかな……」
そんな不安が頭をよぎるたびに、彼女は心の中で陽介の穏やかな声を思い出していた。
「無音の音。それは、自分の中にずっとあったのに気づけなかったものかもしれない」
陽介の言葉が、何度もリピートされるように美咲の耳の奥で響いていた。
その夜、美咲は思い切ってポッドキャストに匿名メッセージを送ることを決意した。配信者へのコメント機能を開き、文字を打つ指が震える。
「初めてメッセージを送ります。『星空の向こうで』を聞いて、昔の自分を思い出しました。私はかつて小説家を目指していましたが、挫折してしまいました。それでも、あなたの言葉を聞いて、もう一度何かを書きたくなりました。本当にありがとう」
美咲は送信ボタンを押すとき、心臓が大きく跳ねるのを感じた。それがどんな形で届くのか、どんな反応が返ってくるのか――想像すると、胸が苦しくなるような不安と期待が混ざっていた。
数日後、仕事を終えて帰宅した美咲は、いつものように「星空の向こうで」を再生した。いつもと変わらない陽介の落ち着いた声が、夜の部屋を満たす。
「今夜は、リスナーさんからのメッセージを一通ご紹介します」
美咲の心臓が止まりそうになる。まさか、自分のメッセージが読まれるとは思わなかった。
「『かつて小説家を目指していましたが、挫折してしまいました。それでも、もう一度書きたくなりました』という言葉に、僕はすごく感動しました。失敗や挫折は終わりではなく、新しいスタートになることがあります。過去がどんなに辛くても、その記憶は未来を形作る大切な一部なんです」
陽介は静かに続けた。
「もしまた何かを書きたいと思うなら、その気持ちを大切にしてください。無音の音が聞こえるように、あなたの言葉も誰かの心に届くはずです」
その夜、美咲は涙を流しながら陽介の言葉を何度も聞き返した。それは、ただの配信者の言葉ではなく、彼女の心をしっかりと掴む、まるで星空から降り注ぐような温かい光だった。
翌日、早朝の静かな部屋で美咲はまた机に向かった。ノートの白紙にペンを走らせる彼女の手には、以前のような迷いはなかった。
「私の物語は、きっと誰かの心に届くはず……」
彼女がそう信じられるようになったのは、陽介の言葉があったからだった。
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