ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん

第1章 ポンコツ冒険者

第1話 コトル村のエアハルト

 コトル村に夜が来る。魔物の襲来に備えて村の入り口の門が固く閉ざされる。村の周囲には木製の壁で囲まれている。

 しかし、壁の一部が壊れて穴が開いている。深夜になり、魔物たちが集まって来る。狡猾なゴブリンは穴の存在に気づき、仲間を集めて夜襲に来たのだ。

 ゴブリンたちは壁の穴から1匹づつ慎重に入って行く。すべてのゴブリン15匹が中に入る。中は広場になっていた。これから手分けをして略奪を開始する。

 突然、広場が松明の灯りに照らされる。村の自警団員たちがゴブリンたちを取り囲む。1匹も逃さないように壁の穴はふさがれている。団長のヤエンが号令を出す。

 「1匹残らず殺せー」「「「おう」」」

自警団員たちがゴブリンたちに向かって行く。エアハルト・アンカーは今日が初陣だ。エアハルトは訓練のように冷静さを保ちつつ、ゴブリンに立ち向かう。

 ゴブリンは剣を手にしている。エアハルトはゴブリンの大振りの剣を余裕でかわすと間合いに入りすれ違いざま、剣を横に振り腹を切り裂く。

 ゴブリンは剣を落としてうずくまる。エアハルトは背中から心臓を貫いてとどめを刺す。

 「やったぞー」

思わず声に出る。すると後ろに雷撃が走る。振り返るとゴブリンが雷撃に打たれて膝をついている。そのゴブリンをエルメンヒルト・バルリングがとどめを刺す。

 「エアハルト、後ががら空きだぞ。油断するな。」「エル、ごめん。1匹倒したよ。」

 「私は3匹目よ。」「僕ももっとやるぞ。」

 「そこ、私語は慎め。」「すみません。」

ヤエンから注意が飛ぶ。エルメンヒルトはエアハルトの1歳年上の幼馴染である。2人は共に黒髪に黒い瞳であるが、この世界では珍しかった。ほとんどが茶髪で水色の瞳をしている。

 そのため、エアハルトとエルメンヒルトいつも一緒で、エアハルトはエルメンヒルトの後を追いかけてきた。

 エルメンヒルトは冒険者を目指していて、明日、16歳になり独り立ちして、ダンジョン都市ゴルドベルクへ行くことにしている。

 もちろんエアハルトは来年、エル(エルメンヒルト)の後を追いかけてゴルドベルクへ行って冒険者になることにしている。

 10人の自警団員に囲まれたゴブリンは全滅する。ヤエンがエルメンヒルトの肩を叩いてみんなに言う。

 「エルは1人でゴブリンを4匹殺したぞ。」「さすがだな。」「明日、冒険者になりにゴルドベルクに行くんだろ。」

 「みなさん、お世話になりました。」「頑張れよー」「エルならすぐに上級冒険者さ。」

 「それから、エアハルトが初陣でゴブリンを1匹倒した。」「すごいなー」「ルーキーの誕生だな。」

 「僕、もっと強くなります。エルに追いつくくらいに・・・」「おおっ、いいぞー」

こうして、エアハルトが初陣を飾り、エルメンヒルトがコトル村から去ってゴルドベルクへ行く。エアハルトは自警団で訓練と実戦を重ねて剣の腕を上げていく。

 しかし、魔法はエルのように使うことが出来なかった。魔法が使えれば攻撃に幅が出来てもっと戦えるのにな。そういえば、エルは雷撃と炎を使っていたっけ。

 エルから手紙が来る。エルは、剣士になってイオン・アーレスが率いるカリスパーティーに入ってレベル1ながら活躍してる。

 カリスパーティーは、ゴルドベルク最強のクラン、イーリスクランに所属している。

 エアハルトは自分もカリスパーティーに入って活躍したいと手紙を書いてエルに送る。エアハルトはエルと一緒にダンジョンで活躍することを夢見て努力する。

 エアハルトは剣の腕を上げてヤエン団長と同等の腕前になる。自警団の中でエアハルトは主戦力になる。だが、魔法は上達しなかった。

 エルメンヒルトが旅立って9カ月後、再びエアハルトに手紙が来る。エルは8カ月でレベル2になった。これはゴルドベルクで最速記録だった。

 エルは手紙に書いていた。エアハルトのことはカリスパーティーのみんなに話してあるからゴルドベルクに来たら訪ねて欲しい。

 エアハルトは喜ぶ。ゴルドベルクへ行ったらエルと冒険が出来るんだ。もう少しの我慢だ。16歳になったら冒険者になるぞー

 自警団は森の中にゴブリンの巣を発見する。ゴブリン掃討のため、自警団全員に招集がかかる。ゴブリンの巣は山肌の洞穴が利用されている。

 巣の外に団員5人が見張りをして、4人が巣穴に入ることになる。エアハルトはヤエン団長と共に巣穴に入った。松明は他の2人の団員が持って穴の中を明るく照らす。

 中を進むと少し広い所に出る。ヤエン団長が警告する。

 「気をつけろ。待ち伏せがあるかもしれないぞ。」「はい。」

そこへ矢が何本も飛んでくる。エアハルトとヤエン団長は矢をかわしたが松明を持った団員がたおれる。ゴブリンに狙われたのだ。エアハルトは松明を拾うと前方に投げる。

 松明の光が膝をついて低い姿勢で弓を構える6匹のゴブリンを照らし出す。一瞬のことだがエアハルトには十分だ。

 走って突っ込んで行き、ゴブリンを剣で切り殺していく。6匹目のゴブリンを切り殺した時、ヤエン団長が叫ぶ。

 「まだ、奥にいるぞ。」

ヤエン団長は、もう1本の松明を奥へ投げる。剣を持ったゴブリンが何匹か照らし出される。エアハルトは一番近くにいるゴブリンを袈裟切りにする。

 そこへヤエン団長が飛び込んでくる。

 「2人はだめだ。矢に毒が塗ってあった。」「カインとロイが・・・ゴブリンがそんな知恵を・・・」

 「油断するなよ。上位種がいるかもしれない。」「はい。」

エアハルトとヤエン団長は連携してゴブリンを討伐していく。

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