第3話

最近、ネットを中心に噂になっている動画があることは夏月も知っている。その動画を観た者は、八日目の朝を迎えるとともに、頸を圧迫されて死に至るというものだ。だからとて、今朝の騒動を呪いだとするのは、あまりにも非現実的である。

「……呪いなんて、馬鹿げてるのに」

 校門をくぐろうとしたさい、正面から駆けてきた傘と夏月の傘が衝突した。雨粒が滴り落ちるなか、顔を見る間もなく抱き締められる。

 夏月は大袈裟な朝の挨拶に気圧されつつ、内心では嬉しく思いながら躰を密着させた。人目が気になる頃にようやく親友を放した美海みうは、うきうきした表情で顔を覗き込んでくる。

「おはよう、美海。随分ご機嫌ね。朝から良いことでもあったの?」

「おはよう。良いことなんて特別ないわ。貴女の顔を見る以外はね」

「もう、からかわないで。……さては、期末考査に自信があるのね」

「やめてよ、そんなんじゃないわ。わたしが夏月に勝てるのはテニスだけよ」

 美海は夏月と腕を組み、肩をくっつけながら歩き始める。女子高なので互いの距離が近くてもおかしくはないが、美海のスキンシップはとりわけ大胆で、夏月は戸惑うことも多かった。

「夏月も知っているでしょ? あの事件のこと」

「何を言いだすかと思えば、貴女まで」

 夏月は呆れて友人の顔を見た。美海は透明なビニール傘の中で、くるんとした瞳を微笑ませる。

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