第36話 想像以上に酷い~アドレア視点~
「アドレア…お前ってやつは…分かったよ。そうそう、実はカドラーに話しに行ったんだ。そうしたらカドラーも何も知らなかった様で、相当怒っていたよ。もしかしたら協力してくれるかもしれないから、今から行ってくる」
カドラーの叔父上。彼は父上と陛下の弟で、父上と同じように公爵位を承り、家臣に降りた人物。従兄弟のゴーレスは非常に優秀で曲がった事が嫌いな男だ。ジョブレスの事も毛嫌いしている。
あいつなら、協力してくれるかもしれないな。
「それなら僕も一緒に…」
「お取込み中失礼いたします。旦那様、坊ちゃま、グレッサム公爵とゴーレス様がお見えになっております」
「カドラーとゴーレスがか?すぐに通してくれ」
叔父上とゴーレスがこんな時間に尋ねてくるだなんて。一体どうしたのだろう。不思議に思っていると、叔父上とゴーレスが部屋に入って来た。ゴーレスは明らかに怒っていることが分かる。一体何があったのだ?
「兄上、アドレア、急に押しかけてしまって申し訳ございません。実は…」
「伯父上、アドレア。一刻も早くあの愚か者、ジョブレスを王太子の座から引きずりおろしましょう。あの男は、非道で我が儘で、どうしようもないクズだ!あんな男が私たちと同じ血を引いていると思うだけで、おぞましい!」
いつも冷静なゴーレスが珍しく声を荒げたのだ。これは相当怒っているな。
「一体どうしたのだい?ゴーレス。分かるように説明してくれ」
「実は私の妻の妹でもあるメリーアが、投獄されたとの連絡が入ったのです。侍女に詳しい話を聞いたところ、料理が口に合わず食べられなかった事に激高したジョブレスが、牢に入れたとの事!そんな理由で投獄するだなんて!メリーアは体が弱く、ただでさえ医者が傍にいないといけない状況なのに、よりにもよって劣悪な環境の牢にいれるだなんて!
妻は妹の身を案じ、ショックで倒れてしまいました。父親でもあるマレールン侯爵は怒り狂い、夫人はショックのあまり寝込んでおります。私もメリーアが心配で」
「私もこの話しを聞いた時、倒れそうになりましたよ。今日兄上が訪ねてくれた時、協力する事を約束しましたが、そんな悠長な事を言っている場合ではなくなってしまいました。明日にでも王宮に行こうと思っています。マレールン侯爵も全面協力をすると言ってくださっているし。今マレールン侯爵が、同じ被害にあっている貴族にも声をかけてくれているところです」
あまりの衝撃的な話に、僕も父上の一瞬言葉を失った。いくらジョブレスが愚かだからと言っても、そこまで愚かだったとは…そんな事をしたらどうなるかぐらい、分からないのか?それも相手は侯爵令嬢で、姉は自分の従兄弟に嫁いでいる女性だぞ。
そんな女性を、食事がとれないだけで投獄するだなんて…
それほどまでに酷い扱いを受けているだなんて…
「父上、やはりジョブレスはどうしようもない愚か者です。レイリスが心配です。もしレイリスも、メリーア嬢と同じ目に遭っていたら、僕はきっとジョブレスを生かしてはおかないでしょう」
怒りから魔力が暴走しそうになるのを、必死に耐えた。
「そうだな、あまりにも酷すぎる。実はさっき我が家も明日王宮に抗議に行こうと思っていたのだよ。その相談を、今からお前の家にしに行こうと思っていたのだが…」
「兄上もですか。そういえばアドレアは、モーレンス伯爵家のレイリス嬢に熱を上げていると聞きました。彼女は非常に優秀で、魔力まで持っていると。その為ジョブレスのお妃候補最有力者だと聞いたことがあります」
「アドレアを無駄にライバル視しているジョブレスの事だ。アドレアに嫌がらせをするため、魔力があろうがなかろうが、レイリス嬢を妻にするつもりなのだろう。精神年齢が幼児以下だからな。あいつは」
ゴーレスが心底軽蔑した眼差しで、言葉を吐き捨てた。やはりレイリスが、お妃候補最有力者か。それなら尚更早く、レイリスを助けないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。