第34話 なぜこんな事に~アドレア視点~
「父上、それで陛下はなんとおっしゃっていたのですか?どうして急に、ジョブレスのお妃候補選びが早まったのですか?こんなことをされたら、貴族たちも混乱を起こしますよ!」
王宮から戻ってきた父上に詰め寄った。
昨日父上に元に、レイリスの父、モーレンス伯爵が訪ねて来たらしい。伯爵の話によると、今日の昼過ぎ、急に明日から王太子殿下のお妃候補選びを始めるから、レイリスを王宮に連れて来るようにとのお達しが来たらしい。
さすがに今日の明日という急すぎる展開と、予定よりも1ヶ月早まった事でどうしていいか分からず、父上に相談に来た様だ。
当の父上も知らなかった様で、今日陛下に話しを聞くため、朝一番で王宮に出向いたようなのだが…
「すまない、アドレア。兄上には会えなかったよ。どうやら義姉上が倒れた様で。非常によくない状況の様なんだ。義姉上を溺愛している兄上は今、それどころではないようだ。兄上が身動きが取れないうちに、ジョブレスが暴走したらしい」
「それじゃあジョブレスの独断で、お妃候補選びが早まったという事ですか?あり得ない…あの愚かなジョブレスに好き勝手させるだなんて…いくら王妃殿下の容態が良くないとはいえ、あのジョブレスを野放しにするだなんて…」
ジョブレスは僕の従兄弟なのだが、びっくりする程我が儘で頭が悪く、正直言ってとてもではないが次期国王になれる器ではない。ただ、陛下と王妃殿下の子供があの愚か者しかいないため、仕方なく今は王太子に置いているのだ。
あの愚か者が国王になったら、きっと秒で国が亡びる。その為、ジョブレスを形上は国王に据え、美人な妻をあの男に与え、離宮で何もさせずに暮らさせるという話でまとまっていた。
そして僕を含めた王族の血を引く人間たちで、国を動かしていくという流れになっていたのだが…その準備がまだ出来ていない中、あろう事か王妃殿下が倒れるだなんて…
「これ以上、ジョブレスを暴走させる訳にはいきません。一刻も早く、ジョブレスの暴走を止めましょう。あの愚か者は、僕が対処します。ですから…」
「それが難しそうなんだ。義姉上が体調を崩してしまった事で、兄上は唯一の子供でもあるジョブレスにやはり実権を握らせたいという、愚かな考えが生まれ出した様でな。ジョブレスに全ての権限を与えるという、恐ろしい命令を下したそうなんだ…兄上め、何を血迷ったのか…本気で兄上は、この国を潰そうとしているのかもしれない…」
はぁっとため息をつく父上。
「あのジョブレスに権力を与えたら、それこそこの国は潰れますよ!その様な愚かな事を陛下がするだなんて!父上、レイリスが心配です。ジョブレスは昔から僕を目の敵にしていた。僕が愛しているレイリスを、自分のものにしたいと考えるでしょう。その上、レイリスはこの国でも珍しい魔力持ち。きっとレイリスを欲しがるはずです。そうなったら…」
あんな愚かでどうしようもない男が、レイリスを無理やり手に入れようとしたら…きっとレイリスは全力で逃げようとするだろう。最悪の場合…
「父上、のんびりはしていられません。すぐに助けないと!」
「アドレアの気持ちは分かる。でも、我が国では王族の言う事は絶対だ。もし逆らえば、我が家だってただでは済まない。とにかく、穏便に済ませよう。とはいえ、これ以上兄上とジョブレスをのさばらせておくわけにはいかない。どのみち、2人を引きずりおろす必要がありそうだ。アドレア、私に少し時間をくれないか?必ずレイリス嬢を助け出すから」
本当は今すぐレイリスを助けたい。
だが…
「分かりました。父上、僕もレイリスを助ける手助けをさせて下さい。僕の手で、レイリスを助けたいのです」
「分かった、とにかくまずは、我が家と同じように不満を抱いている貴族集めから行おう。令嬢を持つ貴族の中には、今回の件に不満を抱いている貴族も多いはずだ。まずは仲間を集めないと」
確かに今回の件で、不満に思っている貴族も多いだろう。我が家だけが暴走しても、潰されるだけ。我が家が潰れれば、それこそレイリスを助けられない。とにかく仲間を集めないと。
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