第27話 やっぱり私は強いです
「イリ様、レア様、せっかくいらしたんだ。ゆっくりして行ってくれ。すぐに酒と肉を準備しますよ」
「気持ちは嬉しいが、僕たちはまだ16歳だから、お酒は飲めないよ。気持ちだけ頂いておくよ」
「なんだ、まだ16歳でしたか。そういえばイリ様が大暴れしていた時は、まだ少女でしたね」
ガハガハと笑う男たち。ちょっと、誰が大暴れしていたたですって!
「ちょっと、私は街の治安を改善していただけよ。失礼ね。それよりも、久しぶりに勝負しましょう。いつもの様に、束になってかかって来てもいいから」
ニヤリと笑い、かつての下部達に向かって話しかけた。
「イリ様とですか?懐かしいですね。何度も勝負を挑んでも、全く歯が立たなかったのだったな。よし、皆。イリ様と勝負しようぜ」
私と勝負するため、下部達が10人程度集まって来た。
「レア、手を出さないでよ」
近くで見ていたレアに釘をさす。あの男なら、下手をすると手を出して来そうなのだ。
「僕はそんな野暮な事はしないよ。レイリスは強いからね。きっと彼らでは相手にならないよ」
ニコニコしながらそう言ったレア。近くにあったイスに座り、こっちを見ている。あら?随分と私の事を信じてくれるのね。いつも心配性のレアの意外な行動に、正直驚いた。
昔は私が怪我をしないか、ハラハラしながら見ていたレアが、私を信じてくれるだなんて、なんだか嬉しい…
て、私は強いのだから当然よ。何を変な事を考えているのかしら?
レアと過ごすようになってから、変な気持ちになる事が多いのだ。本当に私、どうしちゃったのかしら?しっかりしないと!
気合を入れ直し、下部達を見つめた。
そして
「それじゃあイリ様、やりましょうか」
一気に下部達が襲い掛かって来る。そして…
「うぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁ」
次々と下部達をなぎ倒していく。あっという間に男たち全員を倒した。
「相変わらずイリ様には敵わないな…」
「イヤ…強さがパワーアップしている…本当にイリ様は人間なのか?」
「やっぱり俺らのイリ様だ」
ぐったりとした下部達。ちょっとだらしなさすぎないかしら?
「あなた達が弱くなったのではなくって?本当にだらしないわね。でも、楽しかったわ」
こんな大男たちを次々となぎ倒せるのだもの、やっぱり私は強いのよ。それなのに!
チラリとレアの方を見つめた。
「相変わらずレイリスは強いね。君はこの国で一番強い女性だよ」
ニコニコしながら私を褒めるレア。確かに私は強いけれど、あなたに勝てないのが悔しいのよ。どうしてこの男には勝てないのかしら?全く理解できない!
「イリ様、レア様、宴の準備が出来ました。運動はこれくらいにして、皆で話をしながら飯でも食べましょう」
気が付くとお肉やお酒(飲めないけれど)が大量に準備されていた。たまにはこうやって豪快な料理を食べるのもいいだろう。
「そうね、体も動かしたらお腹が空いたし、せっかくだから頂くわ」
懐かしい仲間たちと一緒に、時間が許す限り食事を楽しみ、話しに花を咲かせた。
そして夕方。
「レア様、イリ様、今日は来てくださり、ありがとうございました。またいつでも遊びに来てください」
「私も楽しかったわ。また遊びに来るわね」
少しの時間だったが、彼らと過ごすことが出来て、昔の事を思い出し楽しかった。まさかレアが、未だに彼らと繋がっていただなんて。
「レア…その…今日は連れてきてくれてありがとう。久しぶりに皆に会えて楽しかったわ」
しまった!私ったら何を言っているのかしら?私があり得ない事を言ったから、レアも大きく目を開けて固まっている。
「違うのよ。私は…」
「レイリスに喜んで貰えてよかったよ。僕も今日はとても楽しかった。また行こうね」
満面の笑みで嬉しそうに話しかけるレア。馬車の中から差し込む夕日に照らされたレアは、なんだか神秘的だ。
「そうね、また行きましょうね」
また行こうだなんて、私は何を言っているのかしら?でも、またレアと一緒に、街に行きたいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。