第2話 夜会に参加しろですって?
「お嬢様!」
「本当にレイリスは…マリアン、この子は自分で何かをやりたいと思わない限り、何を言っても無駄な事は、あなたが一番よく分かっているでしょう?お茶会に参加させても、すぐに帰って来てしまうし。夜会に参加させても、適当に時間を潰して帰って来てしまうし。かといって勝手に帰らない様に目を光らせていても、いつの間にか帰って来てしまうし…レイリスをどうこうしようという方が、無理なのよ…」
再びはぁっとため息をつくお母様。
「さすがお母様ね。私をよく熟知しているわ。マリアン、あなたも無駄な労力は使わない方がいいわよ。私を動かすなんて、ご褒美がない限り無理だから」
私はこのまま自分のやりたいように、生きていくつもりだ。幸いモーレンス伯爵家はお兄様が継ぐし、貴族たちとの絆はお姉様が繋いでくれている。
お兄様とお姉様がしっかりと伯爵家を盛り立てて行ってくれているのだ。末娘の私が、ぐうたら過ごしたところで、我が家がどうこうなる事もない。
私はこれからも、ぐうたら生きていける。そう思いながら、眠りについたのだった。
****
「お嬢様、起きて下さい。お嬢様」
「何よ、うるさいわね。今せっかく気持ちよく寝ていたのに…」
ベッドの上でグーグー寝ている私をたたき起こすのは、マリアンだ。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「お父様が?私はお父様には用はないわ。そう伝えて」
再び目を閉じようとしたのだが…
「相変わらずレイリスは、だらしがないな…子供達のなかで、誰よりも優秀なのに…一体どうしたらこんな娘に育ってしまったのだろうか…ある意味優秀過ぎて、一周回って愚か者になってしまったのだろうか…」
人の部屋で何やら訳の分からない事をブツブツ呟いているのは、お父様だ。
「お父様、レディの部屋に勝手に入って来るのは、止めて下さい」
「何がレディだ!そのだらしのない格好はなんだ?さすがに見苦しいぞ。それよりもレイリス、私が呼んだ時くらい、素直に来なさい」
「あら、お父様が私を呼び出すときなんて、ろくなことがないときですもの。また領地で何かトラブルですか?」
「ろくなことがないとは失礼な!領地はレイリスのお陰で、今軌道に乗っていて、加工工場を増築しているくらいだ。本当にレイリスは、いざという時は私の想像を超えるアイデアと行動力を発揮するのだから…て、今はそんな事はどうでもいい。実はレイリスに、夜会に出てもらいたくて…」
「お断りします」
お父様め、私が社交界の場に出る事を極端に嫌っている事を知っているのに、あろう事か夜会に出ろだなんて。もしかして頭でも打って、おかしくなってしまったのかしら?
「相変わらずレイリスは…実はサフィーロン公爵家の夜会に呼ばれていてね。どうやらサフィーロン公爵家の嫡男、アドレア殿がある女性を探していらっしゃる様で。その女性が貴族である事は分かっているそうなのだが、どうしても見つからない様なんだ。それで、この国の貴族令嬢を定期的に夜会に招待しているそうなんだ」
「そのアドレアとかいう男の為に、どうして私が夜会に参加しないといけないのですか?そんな男、聞いた事も見たこともありませんわ。とにかく、私には関係がない事ですので」
公爵令息かなんだか知らないが、人探しならよそでやって欲しいものだわ。本当に迷惑な令息ね。そもそも、私には全く関係のない話だ。
「もちろん、レイリスがアドレア殿の探し人でない事は、私も120%分かっている。ただ、サフィーロン公爵家と言えば、陛下の実の弟君で、この国で一番権力を持った貴族だ。そんな大貴族直々に招待された夜会に、伯爵家の我が家が断る訳にはいかないだろう」
「一番権力を持った貴族かどうかは知りませんが、私には関係のない話ですわ」
プイっとあちらの方を向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。