第5話
『止まって!避けて!!』
俺がバックステップでその場から移動すると、頭が有った位置を巨大な鎌が通過した。
そこには両手に大きな鎌を持ち、三角形の顔をした虫がいた。頭は2メートル程の高さにある。今までの虫とは大きさが全く違う。
「なっ、なんだんだ、コイツは」
『ここのエリアボスです』
ふざけんな!!
8時間戦い続けて、やっと休めると思ったら、エリアボス?
ここまで来れば一段落出来るんじゃ無かったのか?
1日中移動しながら戦い続けて、流石の俺でも疲れてるんだ。こんな状態でボス戦なんて無理だぞ。
「どうすりゃ良いんだよ?」
『エリアボスを倒せば周囲は安全地帯になります』
そうじゃねーよ!
戦わなくて済む方法を訊きたいんだ。
だけど・・・、
訊かなくてもなんとなく解る。コイツからは逃げれそうに無い。
「鑑定!」
―――――
ビッグマンティス
武器は2つの大きな鎌
羽根は有るが飛翔は出来ない
――――――
嘘だろ?情報はこれだけ?
ここに来るまで【鑑定】使った事無かったけど、使えないスキルだな!
「ムーちゃん、コイツを倒す情報を教えてくれ」
『鑑定に表示させます』
―――――
ビッグマンティス
武器は2つの大きな鎌
羽根は有るが飛翔は出来ない
弱点
頭を斬り落とす
鎌を斬り落とす
火魔法で燃やす
――――――
冗談だろ?これが弱点って、そんなの見ればわかるんだよ!
カマキリなんだから、頭と鎌が無ければ勝てるし、燃やせば死ぬだろ!
斬り落とすと言っても、そんな武器は持って無いし、魔法も使えない。
俺が攻めあぐねていると見て、ビッグマンティスが俺めがけて襲って来た。
俺は横っ飛びで回避し、続けて振るわれる鎌もバックステップで回避する。
鎌のスピードは速いが、攻撃は単純だ。鎌も毎回同じ軌道を通っているように見える。
外骨格だから関節の動きに制限が有るのか? もしそうなら、鎌を振り下ろす瞬間は、攻撃も防御も出来ない事になる。
俺は地面に落ちている石を拾い、鎌が振り下ろされる瞬間を待った。
ビッグマンティスが俺との間合いを詰めて鎌を振り下ろして来た。
俺は後ろへジャンプすると同時にビッグマンティスの頭部めがけて石を投げつける。
次の瞬間、ビッグマンティスの頭部が爆散した。
「へ?」
石を投げただけで、頭部が吹き飛んだぞ。どうなってるんだ?
『レベル差で勝利出来ました。次からは武器の訓練もキチンと行いましょう』
「レベル差って何だよ。詳しく説明してくれ」
『今回のビッグマンティスはレベル18でした。現在のセン様のレベルは43です』
いつの間に、そんなにレベルが上がってたんだ?
まぁ、8時間も休憩なしで戦い続けたら上がるか。
「レベル43なら、森を抜けるのも余裕だろうな」
『森を踏破するには、最低でも85は必要です』
これは、先が長そうだな。
食料が無くなる前に森を出られるのだろうか。
「いつ頃俺はレベル85に到達する予測なんだ?」
『30日から40日後と推測されます』
食料はあと10日分しか無いのに、どうすんだよ!
今日だって野生動物を見なかったぞ。倒した魔物は全部、光の粒になって消えちまった。
今日倒したのは全部虫系だったから、そんなのは食べたくも無いんだけど。
「食料が足りないという問題はどうするんだ?」
『問題ありません。後程手順を説明します。が、今は別の作業を行って下さい』
「収納」
「収納」
「収納」
「収納」
「収納」
「収納」
「収納」
「収納」
俺は今、ビッグマンティスを倒して安全地帯になった周囲の木を1本1本収納している。
日が暮れる前に、自宅を出せるだけのスペースを作れば今日の作業は終了だ。
生きている木は俺の所有物では無いので一度にまとめて収納する事が出来ないようだ。だから1本1本触って収納している。巨木でも簡単に収納できる点はチートスキルだと思うけど、結構使い勝手が悪い。
やっぱりこのスキルは、そこまで珍しいスキルでは無いのかもしれないなぁ。
☆★☆
『では、明日から予定を説明します。耳の穴カッポジッテ良く聞いて下さい』
ムーちゃんの声は俺の頭に直接響いてるから、耳は関係無いだろ。仮に耳を塞いでも聞こえるんだよ。
『明日は、家を作ります』
「・・・ハァ? この家が有るジャン! 地球から俺と一緒に転移して来た俺の家が!」
『結界が有るとは言え、この家はドラゴンの大群に囲まれたら壊れます』
この家が結界を張ってるなんて知らなかった。俺の家って凄いんだな。
でも、ドラゴンが大群で襲って来る事なんて有り得るのか?いくら異世界でもそれは無いよね?
「ちなみに、この家がドラゴンに襲われたらどうなるんだ?」
『ドラゴンブレスなら数回は耐えれます。しかし屋根の上にドラゴンが着地したら、その重量で家が潰れます』
ファンタジーな攻撃には耐えれるけど、物理的に耐えれないって事か。
ドラゴンがいる異世界に、日本の住宅では強度の問題があるのは仕方が無いかぁ。
『ですから、地上5階建て鉄筋コンクリート構造の家を作ります』
「・・・いや、無理だろ。俺にはそんな知識も技術も無いぞ」
『問題ありません。設計図は既に完成してます』
「だから、設計図が有っても作るだけの技術が無いんだって!」
『問題ありません。セン様のスキル【収納】【鑑定】【錬金】で作れます』
・・・【錬金】なんてスキル始めて訊いたぞ!
イツ取得したんだよ!!
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