パート4: 初めてのスキルポイント

(どうすれば…!? どうすればこのSPってやつを使えるんだ!?)


目の前のウィンドウは、ただ情報を表示しているだけ。

触ろうにも、実体がない半透明な板だ。

声を出そうにも、喉が潰れてるのか、ひゅうひゅうと鳴るだけ。


(考えろ…考えろ俺! このままじゃオークに潰されて終わりだぞ!)


オークの荒い息遣いがすぐ近くで聞こえる。

やばい、時間がない!


(ゲームみたいだって思ったよな? ゲームなら…どうやって操作する? コントローラー? マウス? いや、そんなものあるわけない!)


焦りが思考を鈍らせる。


(落ち着け…落ち着けって! ウィンドウは俺の目の前に出てる。俺にだけ見えてるっぽい。なら、俺の意思で動かせるんじゃないのか!?)


そうだ、意思だ! 念じるんだ!


(『スキルポイント』! SPを使いたい! どうすればいい!?)


強く、強く、心の中で叫ぶ。

すると――


ピロリン♪


また電子音が鳴って、ウィンドウの表示が変わった!


《スキルポイント(SP)を割り振る項目を選択してください》

・ステータス強化

・スキル習得


(動いた! やっぱり念じればいいんだ!)


わずかな光明に、心が震える。


(選択肢は二つ…ステータス強化か、スキル習得か…)


スキル習得も魅力的だけど、今はそれどころじゃない!

HPが2しかないんだぞ!? まずは生き残らないと!


(『ステータス強化』だ!)


ウィンドウがさらに切り替わる。

俺のステータス一覧が表示され、各項目の横に【+】マークと必要SPが表示されている。


-----------------------------

名前:ユウキ

レベル:1

HP:2 / 85 【+】(1SP per 5HP Recovery & +1 MaxHP)

MP:15 / 30 【+】(1SP per +5 MaxMP)


筋力:8 【+】(1SP per +1)

耐久:7 【+】(1SP per +1)

敏捷:10 【+】(1SP per +1)

魔力:6 【+】(1SP per +1)

器用:9 【+】(1SP per +1)

-----------------------------

残りSP: 10


(HP回復がある! しかも最大値も上がるのか! これだ!)


説明を瞬時に読み取る。

1SPでHPが5回復して、最大値が1上がる。

MPや他のステータスも1SPで1上がるらしい。


(今の俺に必要なのは、間違いなくHPと…それから、オークの一撃に耐えるための力…耐久力だ!)


HPが2じゃ、回復してもすぐ死ぬ可能性がある。

まずHPを少しでも回復させて、残りは耐久に振る!


(HPに4SP! これで20回復して、HPは22になるはず! 最大値も+4で89か!)

(残りは6SP…全部、耐久に!)


震える思考で、必死に割り振りを念じる。


(頼む…!)


《HPに4SP、耐久に6SPを割り振ります。よろしいですか? YES / NO》


(YESだ!! 早く!!)


念じた瞬間、体の中に温かい何かが流れ込んでくるような感覚があった。


(うおっ!?)


さっきまで全身を苛んでいた激痛が、少し和らいでいる!

完全に消えたわけじゃないが、明らかにマシになっている!

そして、体が、ほんの少しだけ頑丈になったような…気がする!


ウィンドウの表示も更新されている。


-----------------------------

名前:ユウキ

レベル:1

HP:22 / 89

MP:15 / 30

職業:探索者 (E)


筋力:8

耐久:13 (↑6)

敏捷:10

魔力:6

器用:9


スキル:なし

装備:傷んだショートソード、小さなバックラー、汚れた革鎧

所持金:銅貨7枚

-----------------------------

残りSP: 0


(すげぇ…! 本当にステータスが上がった! HPも回復した!)


これが【システム】の力なのか…!

信じられない。まるで魔法だ! いや、魔法以上の何かだ!


グルァ…?


すぐそばで、オークの訝しむような唸り声が聞こえた。

俺がまだ生きていることに気づいたらしい。


(やばい、まだ終わってない!)


痛みは和らいだとはいえ、まだ体はまともに動かせない。

耐久力が上がったとはいえ、もう一発オークの攻撃を受けたら、今度こそ本当に死ぬだろう。


(でも…さっきよりはマシだ! まだ、生き残れる可能性はある!)


わずか10SP。

それでも、確かに俺の運命は変わり始めた。

問題は、このわずかな希望を、どうやって確実な生へと繋げるかだ。


(どうする…!? どうすれば、この状況を…!?)


オークが、再び巨大な棍棒を振り上げようとしていた。

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