最終章:世界の平定

 廃都ルグナ——かつて大陸の中心にあった文明の核。

 今は黒き星に照らされ、闇の星宿たちの儀式が進行していた。

 天空には歪んだ星座が浮かび上がり、世界の均衡が崩れていく。

 地中からは魔物が這い出し、各地の街に絶望を振りまいていた。

 28宿は、東西南北の四方からこの都に集結した。

 蒼藍は神殿の中心に立ち、全員の宿星の力を星盤に集めながら静かに言う。

 「ここが……最終の場だ。行こう、全員で」

 廃都の城門が軋む音と共に開かれる。

 闇の軍勢が迎え撃つ中、最前線には元・星宿たちの残響が立ちふさがる。かつて誰かに愛され、希望を抱き、それでも絶望した者たち——堕ちた星宿たち。

 彼らを迎え撃ったのは、同じ星を背負った者たち。

 心が、精神を蝕まれた残響に寄り添い、涙を流す。

 「あなたはまだ、戻ってこれる……私はあなたを拒絶しない!」

 昴が剣を振るうその先には、かつて同じ技を持つ剣士がいた。

 「あなたは、俺の未来だったかもしれない……でも今、俺は自分で選ぶ」

 触れ合い、対話し、時に剣を交えながら、28宿たちはそれぞれの“闇と向き合う”。

 そしてついに、玉座の間へとたどり着く。

 そこに立つのは——

 闇の器となったかつての星宿。名はすでに忘れられた存在。

 「この世界には、救いなどない。希望が裏切るたび、星は冷たくなる」

 蒼藍が剣を抜く。千佳がその横に立つ。

 「それでも、希望を選ぶ人たちがいる。その力が——あなたを超える!」

 戦いが始まる。

 闇の器は、28人の星宿の力を逆算して構成された“絶対の魔法陣”を駆使する。

 彼の一撃は一つの星座の逆位相。

 防御の術すら打ち消し、宇宙の法則すら無効化しようとする。

 だが蒼藍の中で、すでに28の力は一つになっていた。

 角の未来視、箕の風の誘導、星と軫の星読み、心と房の共鳴。

 それぞれが自らの星を支え、支え合い、ついには“統合の星陣”が完成する。

 「光あれ!」

 蒼藍が星盤を天に掲げた瞬間、28の星が天を貫く光柱を描く。

 その光は闇の器を飲み込み、内側から崩しはじめる。

 「……ああ……やっと……星が、温かく感じる」

 闇の器が最後に微笑み、光に還る。

 すべてが終わった。

 闇の星座は消滅し、空は再び28の星で満たされた。


 数日後。

 世界の各地では、戦が止まり、星宿たちの姿を見た人々が剣を置き始めていた。

 青龍、朱雀、白虎、玄武に属する国々は連絡を取り合い、連合の動きが生まれ始める。

 「星がつなぐ秩序」が、人の言葉に、法律に、文化に形を変えて広がっていく。

 女王・紅は言った。

 「星宿の力が神話ではなく、人の手で繋がれた日。それが、新たな歴史の始まりね」

 そして——

 蒼藍と千佳は、それぞれの道を見つめていた。

 「英雄って呼ばれるの、なんだか落ち着かないな」

 「うん。でも……誰かの笑顔を見るたびに、良かったって思える」

 彼らは旅を終えてなお、歩き続けることを選んだ。

 星が地上に宿り、再び誰かの心に灯る日まで。


 夜空には、28の宿が輝いていた。

 まるで、地上に星をもたらした者たちの姿を見守るように——

【完結】

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星宿の光:青藍と千佳の28宿統合譚 mynameis愛 @mynameisai

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