④【スキヤ◯キ】
あの刺激的で刹那的な甘い夜から、まだそれ程時間が経過していないある日。
私はベッドの上に寝転んで、スマホを眺めている。
そして、そこにある優ちゃんの写真を見ては一人重いため息をつく。
はあ〜……成り行きとはいえ、私ったら未成年に手を出してしまうとは…
私はそんな事を考えながら、頭を掻きむしる。
まぁでも……お互い合意の上だったし。確かにあの時私たちには愛があった…
だってあの日、優ちゃんは何度も私の名前を呼んで、私を求めてくれて…
あの時の優ちゃんのイケメン具合ったら物凄かった。思い出すだけでドキドキしてしまう。
いけない! こんなんじゃダメだわ! もうすぐ優ちゃんがここに来るっていうのに!
その時、インターホンが鳴る。私は小走りに玄関へと向かいドアを開ける。するとそこには優ちゃんがいた。
「い、いらっしゃい!」
「こんにちは」
優ちゃんが笑顔で挨拶する。その表情からは少し緊張しているような様子がうかがえる。
「どうぞ入って」
私は部屋へ案内しようとする。優ちゃんは丁寧に靴を脱ぐと
「おじゃまします。はい、やぶきさん」
そう言って優ちゃんは手に持っていた紙袋を差し出す。
「これ、良かったら食べて下さい!」
私は差し出された紙袋を受け取る。中を見ると、ドーナツが入っていた。
「ありがとう! 嬉しいわ! あとで一緒に食べましょう」
私が喜んで受け取ると、優ちゃんは嬉しそうな顔を見せた。
「はい、お願いしますね」
いつかの約束通り、優ちゃんが私のアパートへ初めて遊びに来た。
あの体を重ねた夜からまだ日も浅いのに…
あの時私はああ言いはしたが、まだきっちりと気持ちの整理がつかないままでいた。
そんな猛獣の檻に子兎は手土産まで持って来てくれたのである。
私っ! 絶対に変な気を起こさないでね!?
それから私はリビングへ優ちゃんを通す。
「道には迷わなかった?」
「はい。前もって住所を聴いていましたので」
テーブルの前に座ると、優ちゃんは。
「今日はやぶきさんちに招待してくれて、ありがとうございます!」
優ちゃんは律儀にそう言った。
私は優ちゃんの相変わらずの雰囲気に、思わず頬が緩みそうになるのを堪えた。
「いえいえ。遊びに来てくれてありがとう。何もないけどゆっくりしていってね」
私は優ちゃんが来る前に予めミルで挽いておいた豆を使いコーヒーを淹れる。
「優ちゃん、フレッシュ無いのだけど、ミルクでもいいかしら?」
「あ、はい。構いません。むしろミルクの方が好きです」
「了解」
私はミルクをピッチャーに注ぎ、そしてそれらをトレイに乗せ、優ちゃんにもてなす。
「はい、優ちゃん」
「ありがとうございます。いただきます」
優ちゃんは礼を言うと、カップにミルクを注ぎ、コーヒーに口を付ける。そして、
「美味しい……」
優ちゃんはそう呟くように言うと、また一口飲んだ。
「それはよかったわ」
私は優ちゃんの感想を聞くと、安心して微笑む。
「やぶきさんの淹れてくれたコーヒー、すごく美味しいです! 毎日飲みたいくらい」
優ちゃん、それは「毎日俺に味噌汁を作ってくれ」と同じ意味で捉えてもいいのかしら?
私は少し照れながら言う。
「さっき、久々にミルで挽いたんだ。普段は面倒で休日の時くらいしかやらないんだけど、優ちゃんにはと思いまして」
優ちゃんはコーヒーにまた一口口を付け
「それは光栄ですね。美味しい」
優ちゃんの無邪気な笑顔が眩しい。
「あ、折角だから、優ちゃんに頂いたドーナツ出そうか。優ちゃん今食べられそう?」
「コーヒーと一緒に食べる甘いものは別腹なので!」
優ちゃんは拳を向けドヤる。
そう言えばそうだったわね…
私たちは優ちゃんから頂いたケーキを頬張りながら、いつもの趣味トークに花を咲かせた。
「やぶきさんのアパート、素敵ですねー…」
優ちゃんがリビングから周りをキョロキョロ見渡しながら、感嘆の声を上げる。
「そうかなぁ……でも、あんまり広くはないよ」
私は苦笑いを浮かべつつ謙遜した。
「所々にやぶきさんらしさを感じられる物が沢山あって…やっぱ素敵…」
「は、恥ずかしいからあまり見ないで〜」
私は両手を前に出して制止を促す。
「あ! すみません、つい。失礼しました」
そう言うと優ちゃんは少し大人しくなってしまう。
ああ! そんなつもりで言ったんじゃないの!
「優ちゃん! そんな落ち込まないで! 全然気にしていないから! ほら、もっと喋りましょう!」
私が慌ててフォローを入れると、
「は、はい。わかりました」
と言って優ちゃんは落ち着きを取り戻す。
それから優ちゃんと、 音楽や最近読んだ小説、普段の生活のことなどを話しているうちに、いつの間にか夕方になってしまった。
私も優ちゃんも、結構話し込んでしまったみたい。
「もうこんな時間なのね。優ちゃん、そろそろ帰らなくて大丈夫?」
「え! あ、はい。大丈夫です。それに明日も休みですし」
優ちゃんは少し慌てた様子で言う。
「あら、そうなの?」
「はい。明日は夕方の塾以外は特に用事もないですし」
優ちゃんがそう言うので、私は少し考える。
「じゃあ、今晩泊まっていく?」
私は提案する。
すると、優ちゃんは目を輝かせて、
「いいんですか!?」
と言った。
「もちろんよ。優ちゃんさえ良ければ是非。あと、親御さんにはそのこと連絡入れてもらえる?」
私は笑顔で答える。
「ありがとうございます。実は、母には今日は友達の家に泊まるかも知れないとは言って出てきたんです…」
優ちゃんは申し訳なさそうにそう答えた。
「そうだったのね。なら、ちょうど良かったわ」
「はい。ありがとうございます。では早速……」
そう言うと優ちゃんは携帯を取り出し、親御さんに連絡を入れた。
「あ、お母さん? あたし、優。うん、そう。それでさ、今晩やっぱり友達のお家に泊まりたいんだけど……えっ!? 女の子だよ! やぶきさん!」
へー、優ちゃんってお母さんと話すときはこんな感じなんだ。ちょっと新鮮!
私は優ちゃんの肩をちょいちょいと指でつついて
「変わってもいいかな? 電話」と優ちゃんにウインクしてお願いする。
優ちゃんは少し赤くなり
「あ、あの、今友達が、電話変わるって言って」
そこまで言った後、私は優ちゃんのスマホに顔を寄せ優ちゃんのお母さんに向かって話し始める。
「初めまして。優さんにはいつもお世話になっております。早乙女やぶきと申します。あ、いえ、そんな、とんでもないです。こちらこそ優さんには大変良くしていただいております。あ、はい、はい。そうですね。いつも優さんとお会いするときは楽しく過ごさせていただいています。はい、はい。あ、はい、わかりました。伝えておきます。はい、失礼します」
優ちゃんのお母さんとの通話を終えた。
「や、やぶきさん……そんな畏まらなくても……」
「あ、ああ、つい。なんか緊張しちゃった」
「す、すみません……うちの母が変なこと言って……」
「いやいや! 全然! 気にしないで! 逆に楽しかったから! あはは」
「そ、そうですか……」
「お母さんから優ちゃんに伝言、"やぶきちゃんは良い子だから安心して任せられる"だって」
「あ、ありがとうございます……やぶきさんのことはよく話しているので信頼してくれていると思います」
「あはは……それは嬉しいけど恥ずかしいな〜…」
私は心の中で懺悔する。
ごめんなさい優ちゃんのお母さん! お宅の娘さんに一度とは言え手を出してしまいました! しかもファーストキスまで! でも女の子同士だからノーカンですよね!?
「……きさん」
「ん?」
私は優ちゃんの声に反応する。
「やぶきさん、聞いてますか?」
「あ、あぁ、ごめん!ぼーっとしちゃって」
いけないいけない。
「もう、しっかりしてくださいね」
「は〜い」
それもこれも、優ちゃんが可愛過ぎるからいけないんだ! 何とも理不尽な偏愛物言いが人知れず彼女に向けられた。
「それじゃあ、お夕飯の支度でもしましょうか」
私はキッチンに立ち、冷蔵庫の中を見渡す。
お豆腐、お肉、人参に椎茸、ネギに白菜。あ、卵もある。
それらを優ちゃんに相談すると
「すき焼き、ですかね!」と優ちゃんの瞳の端がキラリと光った。
私はそれ程料理が得意ではない。
なので、優ちゃんに教えてもらいながら作ることにする。
「割り下がないけど、買ってこようか?」
私が優ちゃんに訊ねると
「いえ、多分作れると思いますよ」
そう言うと彼女は醤油、みりん、砂糖、顆粒出汁などを使い、あっという間に作ってしまう。味見をして
「うん。大丈夫かな。やぶきさんも味見して下さい」
私は優ちゃんから差し出された小皿を手に取り味見した。
「あ、すき焼きのタレだこれ…美味しい」
すき焼きって素とかなくて作れるものなんだ。優ちゃんの女子力、というかオカン力がすごい…
「あとはこれに具材を入れて煮込むだけなんで。炊けたご飯を混ぜて用意して待ちましょう」
そう言うと優ちゃんはテキパキと動き始めた。
私も何か手伝おうと思ったけれど、優ちゃんが
「やぶきさんは座っていてください」と言うので、大人しく待つことにした。
あれ? 前に他人の家の台所は勝手が違うからなんたらかんたら言ってなかったっけ?
「嫁になって……」私は知らずと独り言ちた。
グツグツと目の前の鍋からは良い音と良い香りが漂ってくる。
「やぶきさん、できましたよ〜」
「わあ!おいしそう!」
二人して手を合わせ「いただきます!」をし、私は優ちゃんの作ったすき焼きに舌鼓を打つ。
「おいしい! 優ちゃん凄いね」
「いえいえ、そんなことないですよ」
優ちゃんは謙遜する。
「そんなことあるよ! 本当においしい! ご飯が進む!」
「ふふ、ありがとうございます」
優ちゃんが優しく微笑む。
「すき焼き。すき焼き…スキヤキ…」
優ちゃんが何か独り言つ。
「どうしたの?」
「いえ、すき焼きって言葉の中に一文字加えるととても素敵な言葉になるんですが…」
優ちゃんはそういうと少し悲しげな顔になって
「いえ、何でもありません! 食べましょうやぶきさん!」
「? あ、う、うん。そうだね。頂こうか」
「はい! あ、やぶきさん、お豆腐取って貰ってもいいですか?」
「あ、はーい」
私はお玉で豆腐を掬って優ちゃんの取皿に入れてあげる。
「はい、どーぞ」
「ありがとうございます」
優ちゃんはそれを卵と絡めて口に含みモグモグする。
私はそんな優ちゃんの仕草に目を奪われる。
優ちゃんは私の視線に気付いたのか、上目遣いにこちらを見てくる。
そしてニッコリと笑いかけてきた。
可愛い……
「やぶきさん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
「そうですか?」
「うん。それより優ちゃん、もっと食べる?まだいっぱい材料はあるけど」
「はい! まだまだ食べられます」
そう言うと優ちゃんはお椀を差し出してくる。
私はそこに肉と野菜を盛り付ける。
「はい、どうぞ」
「はい、やぶきさん、あ〜ん」
「あ〜ん」
私は優ちゃんにされるがままに口を開けて、箸で摘まれた具材を食べさせて貰った。「は〜、しあわせぇ……」
「やぶきさん、なんかおじさんみたいですね」
「え〜、酷いなぁ」
「ふふ、すみません。でも、やぶきさん、すごく幸せそうな顔をしているのでつい……」
「そりゃあ、好きな女の子にすき焼きを作ってもらってあ〜んしてもらえるんだもん。こんなに幸せなことはないよ」
「あぅ……や、やぶきさん! 恥ずかしいですからやめて下さいよ」
「あはは、ごめんごめん」
「もう、反省していないじゃないですか」
優ちゃんは頬を膨らませて抗議する。
改めて、可愛い……
それから私たちはお腹一杯になるまですき焼きを堪能し、お風呂から出ると、優ちゃんはちゃっかり着替えも持参してきていた。
「優ちゃん、もしかして最初から泊まる気だったんじゃ……」
「あ、バレました? 実はそうです」
優ちゃんはテヘッと舌を出して言う。
可愛すぎる……!
「まあいっか。今日はたくさんお話ししたから疲れたよね。ゆっくり休んで」
「はい。ありがとうございます」
私は優ちゃんを寝室へ案内する。
「ここが私の部屋だよ」
「わあ!」
優ちゃんは部屋に入ると嬉しそうに歓声を上げた。
CDと本ばかりの私の部屋のどこに歓声を上げる要素があったのだろう。私は苦笑する。
「えっと、ベッド使っていいよ。私は布団敷いて寝るから」
「あ、いえいえ! そんな! 私が床で寝ます!」
優ちゃんは両手を前に出して必死に遠慮する。
「いやいや、お客様にそんなことさせられないよ。大丈夫だから」
「いえいえ、やぶきさんはお客さんというより、もう家族みたいなものなので! 気にしないでください!」
優ちゃんは真剣な眼差しで言う。
「え、あ、う、うん。分かったよ。じゃあ、一緒に寝ようか」
「はい!」
優ちゃんは満面の笑みで答える。
こうして私たちの夜は更けていった。
「…やぶきさん、寝ました?」
仮初の静寂を断ち切るように、隣の優ちゃんが呟いた。
「…起きてるよ」
私は上を向いたまま答えた。
「起きてたんですね」
「……うん」
「……あの、一つだけ聞いてもいいですか?」
「うん。何?」
「……あたしたち、女同士だから、恋人にはなれませんけど、それでも友達でいてくれますか?」
私は優ちゃんの質問に驚いてしまった。
優ちゃんは不安そうな様子で私の返答を待つ。
私は少し考えてから口を開く。
「……もちろんだよ。私たちはずっと友達。これからも、仲良しでいようね」
私はそう言って優ちゃんの手を握った。
すると優ちゃんは安心したように微笑んだ。
「…よかった。あたし、あの日の夜、やぶきさんと共に過ごして、引きずっちゃいけないと自分に言い聞かせても、まだすっきりしてなくて……」
優ちゃんは悲しげに呟く。
私は黙って優ちゃんの言葉に耳を傾ける。
そして、優ちゃんは続けた。
まるで懺悔でもするように。
「新しい恋を見付けようなんて、それらしいことを言っても、どうしてもやぶきさんのことが頭から離れなくて…」
「……」
私はただ静かに彼女の言葉を聞く。
優ちゃんは続ける。
とても苦しそうに。
「この恋を諦めなくちゃと思って、忘れようとしたのに、忘れられなかった。だから、今日やぶきさんに会えて、本当に嬉しかったです。こんな気持ちのまま、やぶきさんに会ってごめんなさい…」
私はゆっくりと首を横に振る。
「謝らなくてもいいの。だって、私も同じだもん」
私は優ちゃんの手をギュッと握った。
彼女はビクッとしてから私を見る。
私は彼女に向かって言う。
彼女に届くように、精一杯の想いを込めて。
「私も優ちゃんのことが好き」
優ちゃんの目が大きく見開かれる。
私は続けて言う。
今度は自分の言葉で、はっきりと。
「私は優ちゃんが好き」
優ちゃんは呆然としている。
私は構わず話を続ける。
「あの、優ちゃんと結ばれた日のことは、きっと一生忘れないと思う。優ちゃんと過ごした日々は、私の大切な宝物だよ。でもね、私はやっぱり優ちゃんと友達になりたい。それは、私が男だったとしても変わらない」
私は優ちゃんの顔を見て言う。
「優ちゃんが女の子だからとか、そういうことじゃないの。私は、優ちゃんと、相田優と、本当の意味で親友になりたいの」
「やぶきさ……」
「優ちゃんが男の子だったとしたら、私は優ちゃんに告白して振られてたかもしれない。でも、優ちゃんが女の子だったから、私は勇気を出して好きになったの」
私は優ちゃんの言葉を遮るように話す。
「ねえ、優ちゃん、私は今でも優ちゃんのことが大好き。これは私にとって、紛れもない事実なの」
私は真っ直ぐに優ちゃんの瞳を見つめる。
優ちゃんの頬を涙が伝う。
「優ちゃん、今は私も苦しい! 出来ることなら感情のまま優ちゃんを押し倒してしまいたい!」
私は力強く叫ぶ。
優ちゃんは目を大きく見開いて私を見ている。
私は優ちゃんの目をじっと見据えて言う。
これが今の私に言える精一杯。
「でも、そうしてしまったら、きっとこの先前に進んで行けないと思うの。優ちゃんも、私も……」
優ちゃんは涙を流しながら小さくコクりと肯く。
「だから、私は我慢するよ! いつか、優ちゃんが心の底から幸せになれる日まで」
私はそう言って、優ちゃんの頭を優しく撫でる。
「……やぶきさん」
「私だって今は辛いよ? だけど、優ちゃんのことを想えば、これくらい平気だよ」
そう言って私は笑顔を作る。
「……ありがとうございます」
優ちゃんは泣き笑いのような表情で言った。
「いえいえ、どういたしまして」
私はそう言って微笑む。
「納得は出来ないだろうけど、今はまだ時間が必要なんだと思う…私にも、優ちゃんにも…」
優ちゃんはコクリと肯く。
私は優ちゃんの頭をもう一度ポンポンと叩く。
「でも、そこにやぶきさん自身のことを入れないの、ズルいです。私の為だけじゃなく、やぶきさんの幸せも含めて、これから、進んで行きましょう…」
優ちゃんが私の狡い自己防衛本能を容易く見抜く。
そうだよ。今の言い方は、私、狡かった…
私はバツの悪い顔で苦笑しながら優ちゃんに詫びた。
「ごめんなさい。また、私の弱いところ出てたね……。優ちゃんの前で、恥ずかしい…」
俯くそんな私を優ちゃんは優しい微笑みで見つめながら真綿のような言葉で包んでくれる。
「知ってますよ。やぶきさんが弱い人だってことくらい…。今更です。でも、それ以上に人に優しく出来る人だというのも痛いくらい知ってます」
慰めていたつもりが、いつの間にか私が優ちゃんに慰められている。
何だか恥ずかしさと嬉しさで涙が溢れそうになった。
そんな私の頭を今度は優ちゃんが優しくポンポンと叩いてくれる。
「私の嫌な過去も、時間と優ちゃんが柔らかく包んでくれたように、私たちの悩みも時間が解決してくれるよ。だから、大丈夫だよね…」
私はそう言って優ちゃんを抱き締めた。
「無理せず一緒に頑張ろう。私の最愛の親友っ」
私はそう言って、優ちゃんから離れた。
それから、私たち二人は無言のまま暫く見詰め合う。私の目にも彼女の目にも、涙の跡がまだ薄っすらと残っている。
やがて、どちらからともなく左手を差し出し合って握手を交わした。
そして、お互いの健闘を称え合うように強く握り合った。
手首の音符が揺れ合い、カチャリ…と一つ音を立てた。
輝かしい未来への扉を開く、鍵の音のように。
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