第3話

と、その時、突然木立の陰から剣を振翳した者が飛び出して来て阿修麗の背後から切り付けた。

 阿修麗は振り向き様に引抜いた剣で相手の剣を受止める。

〔キーン〕という鳥肌の立つような金属音を発して剣と剣が激しくぶつかりあった。

「なっ……まだ子供ではないか」

 阿修麗は相手の顔を見て呆れたように言う。

見ると、それはまだ十四、五といった少年だったのだ。

「小僧!! 後から切り付けるような卑怯な真似を何処で教わったッ!?」

 驚いて駆寄って来た宇佐が少年に向ってがなり立てる。

 すると少年は

「お前達に卑怯者呼ばわりされる謂われは無い!! 敵を討つ為なら何と言われようと構いはせぬ。それに私はもう十五だ、小僧ではないッ!!」

と大声で言ってからヒョイと後へ飛退くと、剣を握り直して再び身構えた。

 賢そうな眼には憎悪の色が浮かんでいる。

恐ろしくすばしっこそうで、おまけに威勢が良い。

「敵……そうか、そなた火の国の……」

 阿修麗は少年を見据えたまま呟いた。

「では先ず名を名乗れ、その御方は我軍の将。敵将を討つ時は名乗りを上げるものだ」

 横から宇佐が厳しい口調で言った。

「私は、火の国の丞相、祥貴志ショウキシが甥、公貴怏クキヨウ。両親の、いや、一族の敵覚悟せよ!」

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