落ちこぼれ少女の生き方
桃羽りり
第1話 手を振られるのが怖い
私は、コミュニケーション能力が著しく低い。人に伝える能力が低いのはもちろん、人と話すのが苦手だ。
陽キャに話しかけられると震え上がりそうになるくらいには人見知りなのだけど、、、
チャイムの音が鳴った瞬間解放されたかのように人が散らばっていく。私たちの中学校は、なぜかチャイムの音がお馴染みの音楽ではない。最初は不思議に思っていたが、もう慣れてしまった。
廊下に出た瞬間戦場にいる気分になる。
少し離れたクラスにいる親友に借りたものを返すために、廊下に出なければならなかった。人を避ける方向に迷う時間が気まずい。
いつもできるだけ廊下に出たくないんだけどなぁ…
「あ、鈴!返しにきてくれたの?」
私の親友である
私は別のクラスに行くのも一苦労なので心の中で歓喜の音楽が流れていた。
「うん、ありがとう。じゃあね。」
「うん、またね」
陽凪ちゃんは私が唯一まともに話せる人かもしれない。幼馴染で、小学校も同じだ。陽凪ちゃんはコミュニケーション能力が高く、優秀で、いつも助かっている。
何事もなく
私から見て前の方に、圧倒的陽キャの輝きを放つ
いるだけならなんて美しいんだろうと思うだけなのだけど、こっちに向かって手を振っていた。私は一瞬青ざめてあわあわしてしまった。
話しかけられるのも無理なのに手を振られるとはとんでもなく恐ろしいことなのだ。もし、私の後ろに人がいて、その人に手を振っていた場合一巻の終わりである。でも、私に向かって手を振っていた場合手を振り返さなければそれも一巻の終わりである。
私の頭はとんでもないぐらい回転しだけれど結局手を振りかえすことが出来なかった。後ろを見ると人がいなかったから、きっと私に振ってくれてたんだろうなぁ…
自己嫌悪になりながら、自分の教室に戻った。
小鳥たちが一生懸命に飛ぼうとしていた。向かい風なのに確固たる決心の目だった。
「次回こそは、絶対勇気を出してみせるー!!!」
心の中でそう叫んだ。くよくよしてても自分の性格を変えられるわけではないもん。
私も小鳥みたいなものだ。コミュ力落ちこぼれだもん。
みんな優しいことを分かっているから。そもそもこんな対応で嫌がられていないことが奇跡だと思う。さっきの石火矢ちゃんも完全に無視してしまった感じだったし。それでもみんな優しく対応してくれる。このクラスで幸せだ。だからこそ頑張りたい。過去を忘れて今を考えたい。
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