第5話

路地裏から、すっかり伸びきった男を片手で引き摺りながら音もなく現れたのは全身黒ずくめのスーツの男と女。

口元は黒い布のようなもので隠している。

…………何だこの怪しさ満点の二人組は。


警戒するあたしに話しかける黒髪短髪の男は口調と表情こそ穏やかなものだが、細められたその目に温度は宿っていない。


「君、一人で来たのかな?どこから来たの?」


……こいつらにペラペラと自分の事情を話していいんだろうか。

だってカタギじゃないことは確か。


180は優に超えているであろう身長、端正な顔立ち。

第二ボタンまで開いた黒シャツからは肌に施された鮮やかな刺繍が覗いている。


…………ヤクザかな、ヤクザだな。にこやかなヤクザだな。

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