決着
地上では、レアが引き続きエネルギー波の雨を降らせていた。
怪物は相変わらず素早い身のこなしだが、避けるだけで反撃はしない。
バッテリー容量の蓄積を待っている。今がチャンスだ。
前後左右に巧みに砲弾をかわしていた怪物は、後ろから「ガシッ」と両腕ごと何かにまとわりつかれた。
首を180°転回させて、睨みつけるような視覚センサーを相手に向ける。
レアの視覚センサーもその目を見返した。
「暴れすぎよ。おじさん」
そう言って彼女は不敵な微笑みを見せた。
「第一弾、投下!」
上空の戦闘機から地中貫通型爆弾が投下される。
(あんなものを落としたら、地下で避難している人達もみんな犠牲になる)
レアはスミスが呟いた時の悲しい横顔を思い出した。
口を開け、高エネルギーを溜める。
そのエネルギー弾を、落下してくる物体に向けて放った。
投下された爆弾は地表に到達する直前に、破裂して空中分解した。
強烈な爆風が辺りを襲う。
レアはロイドを捕まえた手を緩める事なく、必死に踏ん張って耐えた。
首をこちらへ向けたままのモンスターロイドは、レアに向けて高エネルギーを発出しようと口を開く。その奥が、赤い光で輝き始めた。
レアはその隙を見て、絡めていた右腕を放し、怪物の胸部へと突き刺した。
ビクンッと体が揺れ、一瞬戸惑ったような表情を見せる怪物に、レアはニヤリとして言葉を放った。
「チェック・メイト、よ」
彼女は筐体内のバッテリーにつながれている一番太い線を握りしめ、それを中からズボッと引き抜いた。
制御線を引き抜かれたバッテリーは急速に温度を上昇させ、内部は臨界点にまで達そうとする。
怪物は視点も首も言うことを聞かずブルブルと痙攣し続けた。
「レア!離れろ!」
ルイスが精一杯の大声を上げて彼女に叫ぶ。
シールドを上げた彼女は声に出すことなく
(ありがとう)
と口で表した。
次の瞬間。
「ドオォォォーン!!」
耳をつんざくような破裂音がして、臨界点を越えた大容量バッテリーの威力により、モンスターアンドロイドは無残に飛び散った。
転がった頭部でキョロキョロしていた目も次第に動きが遅くなり、やがて完全にその光を失った。
「レアーー!!」
横たわるレアの傍らにルイスが駆け寄る。
彼女は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
「…ルイス」
「レア!しっかりしろ!すぐラボに連れてってやる!」
抱き起こそうとしたルイスの手を、レアが掴んだ。
「…レア?」
「いいの…。これで。わたしたちは…、人間を模したアンドロイドは…所詮は人間にはなれない。ただの危険な人造人間だわ…」
ルイスの目から止めどなく溢れる涙が彼女に落ちる。
レアの目からも、同じ様に水滴が流れ出すのをルイスは見つめた。
「…あぁ、ルイス…。わたし、やっとあなたと…、一緒になれたみたい…」
彼女を抱き締めながらルイスは何度もその名を叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます