⑤再会と告白-3-
「あの時・・・俺と別れたいと言った理由を教えてくれないか?」
一時は灯夜を激しく憎んだし、そんな彼の命を奪った和寿が改めて尋ねる。
「俺が男だったから──・・・」
「灯夜?」
「霧雨 灯夜は男だから・・・和寿さんがどんなに望んでも子供を産む事が出来ない。だから・・・・・・」
和寿が親子連れに羨望の眼差しを向けていた事を思い出してしまったミストレインの瞳からは再び涙が溢れ出す。
一部の地域ではあるがパートナーシップが認められていたから、その気になりさえすれば二人が一緒になるのは可能だった。
しかし、和寿は教師という立場にあった。つまり、公務員だ。そのような人間がパートナーシップをしたら彼の両親や教師達だけではなく役所は和寿をどう見るか───。
「和寿さんには素敵な女性と結婚して家庭を築いて欲しいと・・・・・・。和寿さんの将来を思っていたからこそ俺は身を引いたんだ」
(・・・・・・)
確かに、自分は灯夜との間に子供が欲しかった。
凛子と一緒にいる灯夜を見る度に、二人の性別が逆であれば良かったのに・・・と何度思った事か。
「和寿さん、今言った事は本当だよ?でも、本心は和寿さんが奥さんとなった
「灯夜・・・」
自分の想いが灯夜を苦しめていたのであれば、いっその事、彼に何も告げず胸に秘めたままの方が良かったのかも知れない。
だけど、何時か灯夜が凛子、或いはどこかの女性と結ばれていたのかと思うと想像するだけで嫉妬に狂いそうだったのもまた事実。
「灯夜が俺の立場を考えてくれていたのは分かった。だが、俺は同性婚を認めている国に移住しようと計画していたのだけどな」
「えっ?」
和寿の一言にミストレインが間の抜けた声を上げて驚く。
「日本では一部の地域でしか同性婚が認められていない。ならば俺達が日本を出て行けばいいじゃないかと考えていたから、霧雨家にも手を回したりするなど、何年もかけて色々下準備していたのだがな──・・・」
それも台無しになってしまったのだと、和寿が呟く。
「す、すみません・・・」
謝って済む問題ではないけれど、自分の中では怒らせたらいけない人No.1として位置づけられている人物の怒りを買ってしまった自覚があるミストレインは小さくなって怯えるしかなかった。
「・・・・・・俺達は言葉が足らず、随分と遠回りをしていたんだな」
「和寿、さん・・・?」
「謝るのは俺の方だ。俺が海外移住の事を灯夜に伝えていれば──・・・」
(和寿さんが、震えている・・・?)
言葉にしなかったから擦れ違ってしまった事を思い出してしまったからなのだろうか。
ミストレインは歩く和寿の身体が震えている事に気づく。
「灯夜、俺はお前と生涯を共にしたい──・・・」
「うん。和寿さん・・・俺も、和寿さんと一緒に生きていきたい・・・」
ミストレインは男の背中に腕を回し、抱き締める。
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