昨日見た夢2・つれづれ短編集
ましさかはぶ子
140 変なおじさん 6 -ホノボノ-
ある日リビングに妙にきらきらする木が出て来た。
ガサガサして本物の木じゃない。
多分前に何度も見た。
いろんな色で光るし、丸くてつるつるしている物もぶら下がっている。
俺はそれを見るとうずうずしてつい飛び掛かってしまう。
だがそれをして木を倒したらすごく叱られた事は覚えていた。
だから周りをうろうろとするが俺の下僕が追い払う仕草をする。
下僕のくせに生意気だ。
仕方ないので俺はいつも我慢をしている。
それで木の下にはいつの間にか箱がいくつか積み上げられていた。
綺麗なリボンがかかっている。
それを見て下僕の娘が俺に絵本を見せながら言った。
「みんなにサンタさんがプレゼントを持って来るよ。
サンタさんはみんなが寝ている夜に来るんだよ。」
俺は歳で言ったら15歳を超えている。
この娘は小さい頃から俺が面倒をみている。
下僕だが俺にとっては可愛い奴だ。
絵本には髭を生やした赤い服を着た太った男が書いてある。
その男が子どもに木の下にあるプレゼントと言うものを
渡しているのだ。
「いい子にしていると良いものがもらえるよ。」
俺は年寄りなのでそこそこ言葉が分かる。
なので推理した。
どうもこの太ったサンタと言う奴が夜中に来るらしい。
プレゼント?ふむ、なんだかいいものらしい。
まあそんな事はどうでもいい。
でもある夜中にごとごとと音がした。
ふっと俺は目を覚ました。
家にいる下僕とは違う誰かの気配だ。
俺はそっと起きてリビングに行った。
するとそこには一人の人間がいた。知らない奴だ。
俺は娘が言った事を思い出した。
「サンタか?」
俺はそこにいる奴にそっと近づくと背中に飛びついた。
『にゃーーーーーん!(プレゼント寄こせーーーーー!)』
「ぎゃーーーーーっ!」
奴は俺を振りほどいて酷い音を立てながら
窓にぶつかってひっくり返った。
すると俺の下僕がびっくりして飛び出て来た。
「なら猫の声で驚いて起きたんですね。」
「そうです、すぐにガラスが割れる音もして
そこに泥棒が血だらけで倒れていたんです。」
リビングには割れたガラスと飛び散った血が落ちていた。
警官は家主に聞く。
「盗られたものはありますか?
まだ犯人は何も持っていなかったので大丈夫だと思いますが。」
「はい、玄関からリビングに来てすぐだったみたいで
被害は窓ガラスだけみたいです。」
「犯人は背中に何か飛びついてかなり驚いたようですよ。
そのまま窓ガラスに衝突したそうです。」
家の外にはパトカーや救急車がいた。
怪我をした犯人を連れて行くのだろう、救急車が走り出した。
そして警官が真面目な顔になる。
「玄関のカギは開いていたようですね。気を付けて下さいね。」
「はい、油断しました。」
家主は頭を掻いた。
警官はクリスマスツリーの下で警戒しながら
二人を見ているネコを見た。
「おい、お手柄だったな、怪我はないか。」
家主がははと笑う。
「怪我はないみたいです。
年寄りの保護ネコなんですよ、5年ぐらい前に来たかなあ。
老猫なんで引き取り手がなかったんですが娘がこの子が良いと。」
すると母親が娘を連れてリビングに来た。
娘は目をこすっている。
「お父さん、何があったの?」
「うん、猫ちゃんが泥棒を捕まえてくれたんだよ。」
娘の目が丸くなる。
そしてすぐに猫のそばに寄った。
「猫ちゃん、ありがとう。」
小さな手が猫の頭を撫でると猫は喉を鳴らした。
「窓ガラスが割れたのは痛いわね、それに血が……、」
母親がうんざりしたように言った。
「そうだな、でも猫のおかげでそれだけで済んだ。
みんなで掃除しよう。」
「そうね。」
「それでお手柄のネコにはもうちょっとプレゼント奮発するか。」
それを聞いて彼女はにっこりと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます