心が休んだ
果たして自立とはなにか。
あれほど怒涛の転職期間を経て、探しに探して条件面や業務内容面をマッチしたと思ったこの仕事は、まさかこんなにもかみ合わないなんて想像すらできなかった。ひとつの職にとどまる期間こそ短いが、あらゆる内容の仕事をこなしてきた自負があり、初めてでもだいたい道筋が見えてくるもの。が、今回は入社して半年が経ってもまだまだ霧の中で歩き続いている。
数字、グラフ、傾向、分析、考察。学生時代から長年やってきたことなのに、ここに来て新人よりもできない。おまけにヒステリックな川村マネージャーとはどんどん関係が悪化し、極寒で身体の動きが固まったように頭も固まり、どう彼をかわすかということがメインに考えるようになってしまった。頭で川村なんてどうせ小物だと自分に言い聞かせても、やっぱり上司の彼からプレッシャーを感じ、また上司の彼に応えなければならない。
時々思うことがある。このサラリーマンたちは日本の中でいわゆる中間層に位置し、それなりに豊かな生活をしている。自慢できる家族や財産もある。だが、誰しも似たような人生で、見てきた世界もほぼ同じ。知ったことはこの世界のほんのわずか。地球の半分を回って歴史に名を残るような偉大な人物と仕事をしてきた私は、まるで無知のような存在。この職場はそんなに偉いのか?!バカみたい。
サラリーマン、こんな精神的なレイプを自ら受けにいっている私には、悲しい理由がある。まずは借金。30代半ばで働き盛りのうちに借金をきれいに片付けたい。次に安定感。先のことや職場の存続を考えず、気が合わない人とは顔を合わずに済む。営業でも接客でもなく、偉そうにさまざまな数字をいじって、提案を出していく。ど素人なのにまるでアナリストのように振る舞う。おまけに有名企業のため、外面はいい。私のとてつもなく高いプライドにピッタリなブランド力。
だが、まるで奴隷のよう。生命と賃金の交換でしかない。とうとうここまで成り下がったのか。泣くにも涙が出ない。自分の道は自分の作品。
休職、しようか。
四ヶ月から七年〜私の職歴詐称の千日〜 @caomei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。四ヶ月から七年〜私の職歴詐称の千日〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます