第4話 デカすぎ負けヒロインとラブコメする話し(Ⅰ) 

 敷地が広大で、建築物が異様に多い我がダンジョン学園。辺境には誰も寄りつかない不気味な建築物。超マイナー部活が押し込められた、部室棟である。


 ダンジョンを彷彿とさせる不気味な外観、建物内は迷宮のように複雑怪奇。今でもも道に迷い、部室棟を彷徨っている学園生がいるとの都市伝説が絶えない。


 マイナー部活の巣窟、学園生達は危険極まりない「ゴブリン」と化し、迷い込んだ学園生達を捕食(無理な勧誘)する事で恐れられていた。



******


 そんなダンジョン学園のダンジョン内。とある一室が俺だけの聖域である。どんなマイナーな部活でも、ちゃんと部室が与えられるのはとても有り難い。


「先輩どうしたんですか?」


 キョトンとした目で俺の隣を見つめているのは『オーガ後輩』。ダンジョン学園序列100位以内、天上人ソレスタルクラスの女子だ。



 本来、接点皆無の女子学園生。とある理由で俺の部室に入り浸っている。



 まずは『オーガ後輩』がどんなヒロインなのか? 諸兄達にも紹介せねばなるまい……


 オーガ後輩、最大の特徴はデカい事だ。自称身長190cm、もしかしたら2m以上と噂されている。

 だが、デカいのは身長だけではない。Fカップ、Gカップ……いやいや、もはやアルファベットで表記するのは不可能! ドデカップの巨乳さんだ。


 また太腿もヤバ過ぎる、丸太のような太腿。どこぞの六花様みたい、諸兄はムッチリした太腿が好きだろう……俺も大好物だ、おっとヨダレが垂れてきたぜ。


 手足はスラリと長い、スタイルはとても良い。


 ラブコメヒロイン。メチャメチャ可愛いのは当然。


 オーガ後輩は人懐っこそうな童顔、赤いほっぺが特徴的、時々鼻に絆創膏を付けているのは、ドアの縁に顔をぶつけてしまうため。


 大きな目、瞳の色は濃いめのグリーン。


 髪型は黒髪ストレートのロングヘアー、切りそろえられた髪は撫子っぽい。


 制服は伏魔殿パンデモニウム所属であることを示す、黒ベースの特別な制服。スカートではなくショートパンツにニーハイを装備。


ちょいギャル風、絶妙に着崩された制服。


 第三ボタンまで外されたシャツ、大きな胸の谷間が露わになっている「乳房が零れ出そうです!!」と、どこぞの炭治郎君なら鼻血を噴き出しそうだ。


 スカートでは小柄な人には「見えちゃう」からとの話し。大丈夫、俺は短パンの隙間からでも興奮できる上級者だ。

 

 これくらい丁寧に描写しておけば、絵師様やAIもイメージ通りのイラストを作成してくれるだろう。


 因みに、AIからは何故か拒否されてしまった。若干性的過ぎたのだろうか?


 文章テキストだけではイメージつかない諸兄には、有名絵師様「raemz」先生や某特撮ヒーローアニメのキャラクターデザイナー「坂本勝」先生のキャラデザでイメージしていただければ大凡おおよそ合っている。


「先輩!! 今日の衣装、評価してくださいっ」

「あっ……ああ」


 俺は一旦部室を追い出される。


「覗かないでくださいねっ♡」

 オーガ後輩屈託のない笑顔でウインク。


 オーガ後輩は部室内、制服を脱ぎ着替えを始めた。


 オーガ後輩の趣味は「コスプレ」である。推し、可愛いアニメヒロインのコスプレを披露してくれる。自作のコスプレ衣装を評価するのが俺の日課となっていた。


 さぁ~て、ボロい部室棟だ。覗ける隙間は幾らでもある。


「坊ちゃま……」


 暗闇の中から声が聞こえる。


 どうやら「覗く」という行為には命の危険を伴いそうだ。だが問題無い。着替えシーンはちゃんと描写されているから安心してほしい。


 オーガ後輩は周囲を気にすること無く制服を脱ぎ始めた。オーガ後輩用にオーダーされた特別製の制服、脱いだ制服はキレイに畳んでテーブルに置かれている。

 ブラジャーも外す、当然ブラも特大サイズ、幼子だったら帽子みたいに被れそうなほどデカい……ゴホン、是非俺も試してみたい。


 オーガ後輩が勝手に持ち込んだ姿見、手ブラ状態で全身を確認。


「ん~ちょい太ったかなぁ」

 指でお腹の肉をつまむ。セーフ??


「ん~~~~よしっ」


 本作は現在「性描写有り」のタグはついていない、見せられるのは深夜アニメレベル、下着姿やパンツぐらいが限界値だろう。それでも十二分にエロいぞ。


 紙袋からコスプレ用の衣装を取り出し、装着する。




 ……「後輩」……ラブコメやマンガ作品では、キャラ設定、主要ジャンルの一つ。


 主人公が「高校二年生」と設定される事が多い理由。それは「後輩」「同輩(同級生)」「先輩」の三パターンの主要キャラを配置することが出来るから。


 「後輩」は「妹」と同じ「年下」キャラであり。被る部分も多い。妹と同じ「愛らしさや可愛らしさ」といった幼さや健気さ、『庇護欲の刺激』が最大の魅力だと考えている。


 妹が家内(家庭・内面的空間)が舞台なのに対し、後輩は主に学園・学校・職場といった社会(社会的空間)が舞台となる。


 身内or他人。


 後輩キャラは特に、ヒロインの成長や変化が魅力的。


 後輩キャラ、諸兄の推を是非「応援コメント」に♡を添えて投稿してほしい。


 ……さて話を戻そう。


「先輩、着替え終わったから入っていいですよ」

「そうか」


 俺は部室に戻った。オーガ後輩が着替えをした後、性なる香りが充満している。


 大~~~~きく深呼吸。


「先輩? なんで深呼吸?」

「最高級空気清浄機の能力を確認しただけだ」


 オーガ後輩、周囲を見渡すがそんな機械、見当たらない。


「……?? どこにあるんですか? 空気清浄機」

「うむ、それを言う事は「禁則事項です(CV:後藤邑子)風」です」


「????」

 オーガ後輩大きく首をかしげる。


 ああ……刻が見える。


「ふ~ん、まぁ~いいかぁ。先輩、新作見てください」


 オーガ後輩はクルリと一回転しながら新作コスプレを披露した。


 今回のコスプレは、プリキュアシリーズの某キャラクター。オーガ後輩のコスプレ制作技術は相当高い、今回の衣装も良く出来ている。


「ふむ、今回は「キュアピース」か、特徴が良く捉えられている」

ですか?」


「うむ」


 俺は頷いた。


 キュアピースの決めポーズを真似る。本作品がアニメならば、見事な変身バンクシーンが挿入されていたであろう。


 俺も脳内で変身シーンを再生しよう。


「わだす、プリキュアシリーズ大好なんです」

 満面の笑み。白い歯が眩しい。

「俺も妹が好きだったからな、一緒に見ていた」


「先輩はどのキュア好きなんですか?」

「そうだなぁ……」


 オーガ後輩が部室に入り浸る理由の一つ。自由にコスプレ出来て、さらにコスプレに対し俺から的確な評価がもらえ、またオタトークが楽しめるからだ。


 だが、本当の理由は……


「黒皇様、今日も来ないね……」

「この前来たのは、何時だっただろうか?」


 この部活、部員は俺とかの有名な「黒皇」様の二人だけ。だが、彼は名前だけの幽霊部員。彼がこの部室を訪れたのは今まで1~2回あったか、なかったか。


 故に、今までこの部室は俺だけの聖域のはずだった。だが……


 黒皇がこの超マイナー部活の部員である事が漏れ伝わってから、黒皇にフラれた三人の「負けヒロイン」が俺の部室部室に入り浸るようになっていた。


 オーガ後輩もその一人、『デカすぎ負けヒロイン』、黒皇と鉢合わせになる奇跡を願いつつ、暇を見つけては俺の部室に訪れていた。


「はい、珈琲コーヒーです」

「サンキュー」


 プリキュアの話しで大盛り上がり。


 喉が渇いたのか、オーガ後輩は珈琲とお菓子を準備。


 コスプレ姿の可愛い女子がお茶を入れてくれる。我が部室がメイド喫茶になった。


「先輩、美味しい?」

「うむ」


 オーガ後輩はニッコリと笑った。良い子である。



 椅子に座るオーガ後輩。我が部室はとても狭い、中心に大きなテーブル、周囲に丸椅子、側面は棚になっている、部活に関する数多くの本やアイテムが並べられ、その他にいくつかのメタルフィギアが飾られていた。


 オーガ後輩が座った椅子、ミシミシと悲鳴を上げている。


 机を隔て、俺はオーガ後輩の正面に座っている。気になるのは紙袋に入った制服、ブラがチラリと顔を覗かせている。


 オタトークが一通り終了すると、次に始まるのは恋愛相談。


「先輩、黒皇様ってどんな女の子が好みだど思いますか?」

「オーガ後輩の方が詳しいだろう。同じ寮に住んでいるだろう」


 黒皇とオーガ後輩は同じ「伏魔殿パンデモニウム」出身、同じ寮で暮らしているのだから接点は多いはずだ。


「男子寮ど女子寮は別棟だし……それに、黒皇様はいっつも誰がと一緒だがら、話しかける機会があんまり無いですしぃ」


「ふむ……」


「それに、わだすは序列あんまり高くない、座る席も隅っこ」


 大きな身体に似つかわしくない、小さな溜息。


 オーガ後輩の序列は80位後半から90位前半くらい、トップ100ギリギリ。それでも高校入学以来ずっと100位以内をキープしているのだから凄い女の子だ。


「黒皇様の周囲にはいっつも取り巻きの女子がいるし……わだすの入る隙なんて何処にもないっちゃ」


「だが、黒皇様は誰とも付き合ったりしないのだろう?」


 俺の問いにオーガ後輩は何度も頷いた。


 黒皇様は仮面の男。それでも圧倒的なイケメンだ。何故かわかってしまう、更に学園内で圧倒的な権力を有する不動の序列一位。


 モテないはずがない。


 だが、「」と言う女の子の噂は絶えないが、「」と噂された女子は皆無。黒皇は誰とも付き合おうとはしなかった。


 負けヒロイン量産装置。


 俺は密かに、黒皇の事をそう呼称している。


「先輩は黒皇様ってどんな人だと思いますか?」

「学園序列トップの男……そして学園トップのヴィランと恐れられているな」


 学園生達は、黒皇を悪のカリスマと呼び、恐れ……また、崇拝していた。


「そう、ですよね……」

 オーガ後輩が寂しそうに俯く。


「……だが、それらの情報は全て「伝聞」であり「噂」や「SNS」で拡散されたものばかり、俺は彼の事を知らない」

 オーガ後輩は俺を見つめている。


「黒皇という人物がどの様な人物なのか本当は身近な人しか知り得ない。人々は噂やネットで多くの情報に接したせいで、だけだ」


 情報過剰の社会では、かえって真実が見えにくくなっている。


「オーガ後輩、いや……この部室に入り浸る女子達が慕い続ける程の人物。我々下々の大衆には知り得ない、すごい魅力があるのだろう」


 オーガ後輩、明るさを取り戻す。


「そうなんですよ!! 黒皇様って皆誤解しているけどとっても優しくて格好いいんですよ!! キャー」


 オーガ後輩興奮、ぶっとい脚を何度も踏みならす。その圧倒的パワーに絶えられず、とうとう椅子が……ぶっ壊れた。


「キャ!」


 オーガ後輩はデカすぎ負けヒロイン。そのパワーは世界のあらゆる物を破壊する。


「イテテ……」

「大丈夫か?」


 プリキュアコスのオーガ後輩、M字開脚状態。ぱいんぱいんと揺れるオッパイ。エロ可愛い、本作品がラブコメであることに感謝せねばるまい。


「せ、先輩……」

 オーガ後輩ちょっとだけ涙目になって、俺の事を見つめた。


「わかっている、俺は何も見なかった」

 オーガ後輩まだ高校一年の女の子。乙女だ。


「先輩は優しいです♡」

「ふ、それで堕ちるならオーガ後輩をチョロイン認定せねばなるまいな」


「わだすは黒皇様一筋なんです!!」

「そ、そうか」

 オーガ後輩は真っ赤になって力説。俺は呆れた。


「先輩」


 オーガ後輩が手を差し出す。

「まったく、俺はどこぞの温水氏と違い、女の子の気持ちがわかる男だ」

 俺は手を伸ばし、オーガ後輩を引っ張り上げようとするが……その……どんなに引っ張っても彼女を動かすことは出来なかった。


 二人、暫し沈黙。

「…………」

「…………」


 沈黙を破る、SNSの着信音。

「あっ」


 オーガ後輩は自身の胸の谷間、胸元からスマートフォンを取り出した。諸兄はオッパイの谷間から物を取り出すシーンを目撃したことはあるだろうか?


「勇者……もうこんなに噂になってる、友達が見たって。先輩見て下さい」

 スマートフォンの画面を覗き込むオーガ後輩。俺と顔がくっつく。


「噂の「勇者」か?」

 オーガ後輩は頷いた。


 勇者の噂。それは俺達底辺にも拡散されている。『ダンジョン学園終末論』の都市伝説である。


 勇者がダンジョン学園に現れると、学園が崩壊するという噂である。


「本当に学園崩壊しちゃうのかなぁ?」

「オーガ後輩は「勇者」の存在を信じるのか?」

「……わかりません。でも」


 現在、ダンジョン学園は三大勢力の権力争いが激化していた。もはや理事会でもコントロール不能と言われている。


 三大勢力のバックには国内外、政財界の大物がついていると噂されている。


「たとえ「勇者」が現れても……きっと、黒皇様が何とかしてくれます!!」

 オーガ後輩鼻息荒く力説する。


「オーガ後輩は何故其処まで黒皇にこだわる。他の女子は一度黒皇のフラれると大概諦めるが」


 俺は「負け続けるヒロイン」になる選択をした。オーガ後輩に質問した。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る