第5話 エルフの里を出る
エルフの里の結界を修復して、はや1月。
そろそろ俺たちはこの里を出ることにした。
そもそも俺たちはフォリドの街という場所に向かっている最中だったのだ。
たまたま襲われていたリーリスを助け、その流れでエルフの里に来てゆっくりしていたのだが、ここに来ることは予定外。
そろそろ本来の目的地へ向かおう。
というわけで、エルフの里を出ることを里長に伝え、昨日の夜は盛大な送別会を行ってもらった。
そして今日、いよいよ里を出る。
「え~もういっちゃうの? もうちょっと里にいようよ」
里長の家で最後の挨拶をしていたら、不満気な顔をしたリーリスにそうせがまれる。
「もうちょっとだけここにいようよ」
「もうちょっとってどれくらい?」
「うーん……。あと10年くらい?」
「長いよ」
ぜんぜんちょっとの時間じゃない。
「じゃあ1年!」
「それもさすがに長いかな……」
リーリスの言葉に苦笑する。
「落ち着きなさい、リーリス。レースケ殿の邪魔をしてはいけないよ」
リーリスの様子に見かねた里長が、彼女に対して声をかける。
「すまない、レースケ殿。私としては、恩人である君の歩みを止めるつもりはない。娘のわがままはきかなくていい」
「別にいいじゃない。もっと一緒にいたいんだもん」
リーリスは不満げに口をとがらせる。
「リーリスには悪いけど、俺たちはもう里を出ることにするよ」
「ということだ。リーリス、お前も納得しなさい」
「……うん。わかった。引き止めちゃってごめんね。でもね、レースケ君。またこの里に帰って来るって約束してほしいの」
リーリスが切実なまなざしでこちらを見て、そう頼んでくる。
その頼みごとを断るほど、俺はデリカシーのない人間ではない。
「約束するよ。またこの里に来る」
「ほんと!? ありがとっ!」
満面の笑みを浮かべながら、リーリスは俺に抱き着いてくる。
こういうスキンシップは、この1月のあいだよくあった。
出会ってから1月。
まったく。ずいぶんなつかれたものだ。
「レースケ君」
と、抱き着いたままリーリスは語り掛けてくる。
「次はいつごろ帰ってくる? 来年?」
リーリスは俺に抱き着いたまま小さくささやく。
そうすると彼女の吐息が耳に当たり、耳がくすぐったくなる。
これがASMRというやつか。
生で実践してもらったのは初めてだ。
「……そこまでは約束できないなあ。でも、できるだけ早く戻るから」
俺はリーリスを安心させるように言う。
「わかった。じゃあ早く戻ってくることは約束してね」
と言って、リーリスが名残惜しそうにしながら俺から離れた。
その後、里長がこちらに来て握手を交わす。
「1月の間、お世話になりました」
「それはこちらの台詞だ。レースケ殿にはいろいろと世話になった。本当にありがとう。この礼として、我らエルフ族は、未来永劫にわたってレースケ殿の味方になることを約束しよう。君だけでなく、君の子孫にわたるまで。我らと我らの子孫が味方する」
「心強い言葉ですね。ありがとうございます」
握手を解く。
「アイナ殿、ラティカ殿、エルシー殿。あなた方にも本当に世話になった。感謝する。またこの里に来てくれ。ぜひとも歓迎しよう」
「はい! ぜひまたご主人様と一緒に来たいと思います! そのときは、またビシバシ皆さんを鍛えますので!」
「エルフの酒は美味かった。次来た時もご相伴にあずかろう」
「大変良いところでした。ジュースも大変美味しかったです」
3人はそれぞれ里長に言う。
彼女たちもこの里を気に入ったようだった。
思い出話を交えつつ、俺たちはエルフの里の端へと向かう。
そしていよいよ、俺たちはエルフの里をでることにした。
そのとき――。
「さよなら!」
「さようなら、レースケさん!」
「また里に来てくれよ!」
「レースケ殿がまた来るまでに、剣を鍛えて待ってるからな!」
「絶対また来てくれよなー!」
里にいるエルフたちが集まってきて、みんなで別れの挨拶をしてくれた。
ここ1月の間で見知った顔が何人もいる。
「レースケ君! また帰ってきてね! 待ってるから!」
その中で、リーリスはひときわ大きな声で別れを惜しんでくれた。
「さようなら! またね!」
俺達は彼ら彼女らに手を振り返し、結界を通ってエルフの里を出ていった。
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