第28話 夢想顕現
決戦当日。
今日は普段のモンスター討伐は中止して、全員でドラゴン討伐の行方を見守ることにした。
それは探索班に限った話ではない。俺もまた、ドラゴン討伐を見届けると決めた。
当初はゼクスに反対されたが、ここは通させてもらった。
彼らの戦いを見逃したら、俺は一生後悔する。
そう確信したからこその押し通しだ。
ちなみにそこまでの移動手段だが、彼らを頼ることにした。
「司令官、乗り心地はいかがですか?」 「上々だ。あの輸送車より揺れも少ないし、快適だ」
「それは光栄です」
俺は変形したゼクスの操縦席に座っている。助手席には当然、セシリアの姿。
他の車両でも、仲間たちがそれぞれ待機していた。
「意外と揺れないわね。やるじゃない、イエロー」
「嬢ちゃんに喜んでもらえて何よりだぜ!」
イエローにはシエラが乗っている。
イエローの希望らしいが、思ったより好評のようだ。
「行動パターンは頭に入ってるな?」
「勿論だぜ、旦那。次は遅れは取らん」
「そうなったら君の修行内容を考え直さなきゃならない。手間を掛けさせるなよ」
「おうともよ!」
レッドにはアッシュが乗っていた。すでに戦術の最終確認に入っているようだ。
幸い、移動中にモンスターは現れること無く目的地までたどり着いた。
それどころか、以前訪れた際に森に潜んでいたモンスターの姿すら見当たらない。
前回の進軍でこの森のモンスターも総出となっていたのだろうか。
それとも、この奥の主が、挑戦者を招くためにそうしているのか。
いずれにせよ、立ち止まる理由はない。
「それでは司令官。先行致します」
「分かった。俺からは一言。吉報を期待する」
「了解!」
森林の前にて、ロボットに変形したレインボー01と言葉を交わす。
ここからは彼らが先行して、ドラゴン討伐を始める。
俺達は最初の引き寄せに巻き込まれないためにここで待機する。そしてバリアが展開されてから現場へ向かうのだ。
「司令官。ゼクス隊長がレリーフの位置まで到着と報告後、通信途絶。戦闘に入ったものと思われます」
「宜しい。それでは向かうぞ」
「了解!」
ついに、始まった。
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「総員、戦闘準備完了!」
「よし、それでは例のレリーフまで向かうぞ」
レインボー01は再びやって来た。
決戦の地、神殿前の広場。
所々に前回の戦いの爪痕が残っており、激戦の記憶を物語る。
レインボー01が所定の位置に立ち、ゼクスはレリーフの前に進み出た。
それをトリガーに、合図に、神殿から光の粒子があふれ出し、広場の中央に光の球体が出現する。
「武器、構え!」
レインボー01が構えた直後、球体が解け、あのドラゴンが姿を現す。
進化前の四本脚の姿。ドラゴンは再び訪れた彼らを威嚇するように咆哮を上げた。
しかし。
「隙だらけですよ」
ブルーが炸裂弾を放つ。それは狙い違わず咆哮のために開けたドラゴンの口に吸い込まれていき、爆発した。
以前ならそのまま気絶していたところだが……
「そう上手くいかないか」
ドラゴンは火傷こそ負ってるように見えるが、倒れること無くレインボー01を睨みつけている。
そしてそのターゲットはレッド。
姿形が違うというのに、彼が自身の足を切り落とした存在だと分かっているかのようだ。
ドラゴンの口から炎が溢れ出る。
しかしそれは、以前に見せた熱線ではない。
「火球だと!?」
「舐めんじゃねぇ!」
進化後に見せた火球がレッドに迫りくる。立て続けに襲ってくる火球をレッドは大剣によって切り払うが、そのせいでドラゴンに近づけない。
そこに援護が入る。
「こちらとも遊んでもらおう!」
「行きます!」
オレンジとグリーンだ。彼らの両手のマシンガンとバルカンによる顔への集中攻撃でドラゴンを怯ませた。
「行くぜ!」
剣を構えたレッドが突撃する。
しかし、ドラゴンは尻尾を振るい、進行を阻む。
「そいつは貰ったぜ!」
そこに左手にエネルギーシールドを構えたイエローが現れ、その尻尾を盾で受け止めた。
そしてそのまま動きを止めた尻尾を掴む。
「レッド!」
「任せろ!」
レッドは魔力を込め、マナクリスタルの刃を展開する。それは結晶が隙間なく噛み合った斬撃の姿だ。
レッドはその剣を尻尾に向けて振るった。
刀身以上に太さがあった尾であったが、レッドの剣技によって見事に切断された。
ドラゴンはたまらず悲鳴を上げる。
そこに追撃するようにゼクスが足元に現れた。
「せいっ!」
左手からエネルギーサーベルの刃を出すと、それによって、前脚に斬り込む。切断には至らぬも、傷は深い。
「各員は傷口を広げろ! レッド! 追撃するぞ!」
「了解!」
ゼクスがそう指示し、レインボー01が追撃の構えに入るが。
ドラゴンの咆哮が響き渡る。
それと同時にドラゴンの体から衝撃波が放たれ、ゼクス達との距離を強引に取った。
そして神殿から光の粒子が現れ、光の繭を作り始める。
「もう進化したのか」
「やっぱこの身体、攻撃力が桁違いっすね」
以前は絶望を示す光景だったが、今の彼らは余裕を持って見ることができた。
自分たちは遥かに強くなっている。
そして、次の対抗策も出来ている。
「隊長。司令官が外周部にいらっしゃいました」
「そうか。間に合ったか」
来なければ始めてしまおうかと思っていたが、間に合ってくれて良かった。
これは自分たちを生み出した彼への恩返し だ。
彼の夢を叶えるならば、彼がそこにいてくれた方が良いに決まっている。
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「戦況は…… もう進化に入ったか」
「殆ど一方的だったようだね。流石だ」
探索班に守られつつ、神殿のエリアにたどり着いた。
既に光の繭は現れており、後はもうあの作戦を展開するのみとなったようだ。
ふと、ゼクスがこちらへ振り向いた。
俺はそれに対して、右手の親指を上げて応じた。
俺の方は問題ない。だから見せてくれ。
その思いが通じたのか、ゼクスは光の繭へ向き直り、叫んだ。
「これよりフォーメーション・ドラゴン・バスターを実施する!
レインボー01、ユニットリンク開始!」
『了解!』
ブルーとオレンジが前に出た!
「ブルースナイパー、モードチェンジ!」
「ブラストオレンジ、モードチェンジ!」
その掛け声と共に変形していく!
その姿は巨大な両足だ!
「ホバーイエロー、モードチェンジ!」
イエローがかけていき、跳躍するとブルー、オレンジの上で変形、腰部と両大腿部を兼ね備えた形になった!
そしてそのままブルー、オレンジと接続!
巨大な下半身へと姿を変えた!
「レッドストライカー、モードチェンジ!」
「グリーンサーチャー、モードチェンジ!」
「ネイビーコマンダー、モードチェンジ!」
レッド、グリーン、そしてネイビーコマンダーことゼクスが飛び上がり、それぞれ右腕、左腕、胴体となる!
そしてそのまま三機と合体! その姿を一つとした!
そして最後にゼクスの胸飾りが飛び上がり、巨人がそれを掴むと、ヘルメットのように自身の頭に被った!
『システムオンライン!』
全員を合わせたような声が響く。
光の繭の方も割れていき、そこに進化したドラゴンが現れたが、ドラゴンは目の前に現れた巨人に驚き目を丸くしていた。
巨人は高らかに告げる。
『アーク・レインボー! 起動完了!』
そして宣言とともに胸を張る見え切りのポーズを取った!
そこにいたのは馬鹿げた作戦の結晶! 俺の夢を詰め込んだ合体ロボである!!
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後書き
この小説はこの場面を書きたくて初めました。
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