第7話 元気になりました!
ぺろぺろ…ぺろぺろ…
うぅーん、くすぐったいよぉ…
ぺろぺろ…ぺろぺろ…
んー、くすぐったいってばぁ…
ぺろぺろ…ぺろぺろ…
「うぅーん…はっ!」
何度かぺろぺろされて、パチッと目が覚めた。視界いっぱいに広がる子犬の顔。ちっちゃな前脚をワタシの顎に乗せて鼻の上をぺろぺろしている。
「ふひゃ!くすぐったいよぉ」
子犬をそっと抱き上げて身体を起こす。子犬は元気に尻尾をフリフリとしていて、怪我をしていたとは思えない元気っぷりだ。
子犬を膝に乗せて怪我をしていた脚を確認すると、怪我はすっかり癒えていて何処にも傷は見えなかった。あれ、あの傷薬ってそんなに効果のあるものだったっけ?
もしかしたら、小さな子犬だったから効き目があったのかも。
私は急いで着替えると、子犬と一緒に居間へ降りた。冷蔵庫からお父さんが作ってくれたスープを取り出して、鍋に移し替えて温める。温めすぎてもダメだから慎重に。
スープをお皿に盛って子犬の前へ置くと、子犬は勢いよくスープを食べ始めた。そして、あっという間に平らげるとおかわりを要求してくる。私はお鍋にあった分を全部お皿に移してから自分の朝ご飯を用意した。
我が家の朝ごはんは、前日お父さんが焼いたパンとスープ。それからソーセージとオムレツだ。お父さんのパンは1日経ってもフワフワで美味しいんだよね。ワタシはお父さんの料理が世界で一番美味しいって思ってるんだ。恥ずかしいから言わないけどね。
子犬の元気な姿をみて、お母さんもお父さんも喜んでくれた。この子はとてもお利口で部屋の家具を齧ったり、至る所で粗相したり、無駄に吠えたり…ということが無い。なので、お父さんはこのまま飼って良いって言ってくれた。ワタシが責任持ってお世話するよ!この子を見つけてくれたライムに御礼を言わないと。
「ありがとね、ライム」
「わんわー!わんわー!」
子犬もライムに恩を感じてるのか、鼻をスリスリとくっつけてる。小さいライムとそれよりも小さい子犬が部屋の中でコロコロと転がっては笑っている。んんんー!子犬と戯れるうちの弟可愛い!!
子犬は『シエル』と名付けた。名前を付けた瞬間シエルの身体がフワッと光った気がしたけど、あれは何だったんだろう?
ワタシがお仕事をしている間、シエルはワタシの後ろをトテトテとついて歩く。それが可愛くて、つい後ろを振り向いてニコニコしちゃう。食堂では、他のお客さんもいるから箱を用意してそこに居てもらう。
「おや、可愛い子犬だねぇ」
お婆ちゃんがニコニコとシエルを撫でると、シエルは『わぅ!』と可愛く返事していた。お客さんが来る度に『わぅ!』と吠えるので、洗い場に居てもすぐにわかる。
「いらっしゃいませー!」
「やぁ、子犬を飼ったのかい?」
「そうなんです。ケガしたのを拾ってきて…」
「そうなのかい。…そうだ良いものをあげようかねぇ」
「良いもの?」
常連のお婆ちゃんが持っていたカバンから1枚の真っ赤な布を取り出した。それを三角に折ってシエルの首に結ぶと…
「可愛い!!」
「ほっほっほっ、あとで冒険者ギルドに行って『従魔タグ』を貰うといいよ」
「じゅうまたぐ??」
「冒険者の中には時折魔物を使役する者がいてね。それらを従魔と呼ぶんじゃが、そうした従魔を街中で過ごさせるためには従魔登録をしてタグを付けねばならんのじゃよ」
「へぇ〜、そうなんだ。…あ、でもこの子は魔物じゃないよ?」
「ふぉっふぉっふぉっ、従魔タグは『このタグを持った動物はこの人が飼い主です』という証明になるんじゃ。もし、この犬が家から飛び出してもこのタグがあればすぐに探せるし野犬として駆除されるのも防げるぞ?」
「…とうろくしてくる!」
「ふぉっふぉっふぉっ、その前に注文良いかのぅ」
「あ、はーい」
あとで、冒険者ギルドに行ってこようっと!
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