paradiso あるいは6日間の、すぐに忘れ去られてしまうような出来事

kusyami

9月24日

 私はふと風呂上がりに、帰宅した時分から付けっぱなしにしていたテレビから流れてきたあるニュースが、どういう訳かとても気になって注意を向けた。


地方ニュースだった。

内容はひどくシンプルだった。


『昨夜まで暴れていた大型台風の残した爪痕』という名目で、引っ剥がされた屋根や、割れて辺り一面に砕け散った窓ガラス、街路樹の倒木が道を塞ぎ続ける様子なんかを映像や写真なんかで紹介していくもので、何か寓話めいた教訓でも見つけたかのように、ニュースキャスターが程々に熱の入った声と、これまた劇的な(演劇のようなオーバーさで、という意味合いで)曇りきった表情を見せながらひとつひとつコメントしていくものだった。私の住んでいる街の映像も混じっていた。


 私がぼんやりと何気なく見ていると、最後はこの惨状についての街頭インタビューでコーナーを締めくくった。

「怖いですねぇ」……女性。

「退社する時に風で会社のガラスが割れちゃって、危ないところでしたよぉ」……恰幅のいい男性。

「修理にどのくらいかかるか不安です」……夫婦。

「今年はこれ以上来ないでほしいですね」……若い女の子。


 それが終わるとCMが始まったので、私は歯を磨くために洗面台に立った。歯を磨いて、化粧水を顔に叩き込んで、それから自分の部屋に向かって、すぐに眠りについた。眠りにつく前、暗闇の中で目を開けて少しの間考え事をした。それからすぐに眠気が来て、朝までぐっすりだった。

 その直前に考えていたことは、最後のインタビューを受けていた女の子が、昨年死んだはずの友達にそっくりだった事だった。

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