きみは、しあわせでしたか?

くらげねこ

第1話

はぁ、はぁ。


走って病室に駆け込む。

其処には、窓の外を眺めている、愛しい恋人がいた。


此方に気付き、振り返る。


「桜、咲きましたね。」


窓の外を指差し、ふわふわと笑う。

前はもっとピンク色だった頬は白くなり痩せこけ、点滴や管に繋がれていて痛々しい。


医者によると、今夜が峠らしい。


彼女に病気が見つかり、余命一年と宣告されてから丁度一年。今日がその日だ。


ふと、彼女が口を開く。


『きみは、しあわせでしたか?』


え、と口から声が漏れる。


今夜が峠というのは伝えていないのに。何故そんな…


『最期みたいなこと…言うなよ…』

「自分の最期くらいわかるよ、けいすけくん」


いやだ。信じたくない。


「ね、きみは幸せだった?」


あぁ…

『勿論幸せだったよ、舞のお陰で。』

「ふふ、良かった。ね、最期のお願い、聞いてくれる?」

『あぁ…、』

「私の事、忘れないでね。」

『勿論だ…』



彼女の、細い体を抱きしめた。


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