第20話 国王様のターン⑤不正の証拠

 さて……。


 これまでの経過をまとめると、露骨なエリオット優遇をやらかした学院長は挿げ替えた。


 貴族派に染まりきった王妃には謹慎を言い渡した。


 エリオットはあまりにバカじゃったのでぶん殴った。


 アーサーとアリア殿を全力で祝福したら、なぜか帝国軍が壊滅し、帝都は何かしらの災害にでも襲われたらしい……。そういうことにしておこう。


 そしてレオメット侯爵は処罰し、侯爵位はアリア殿に引き継いだ。


 うむうむ。

 今のところ、信じられないくらいに状況は好転したのぅ。


 アリア殿と神殿長の協力のおかげじゃ。

 そして再度言うが、アーサーよくやった。


 それで、もし可能なら神殿長に国の要職についてもらえないかとこっそりと打診したが、驚くほど即座に、明確に断られた。

 

 曰く、神殿は政治には関わりませぬゆえ、とのことじゃった。

 『もちろん、切り離せない事、お願い事をさせて頂くことは今後もあるでしょうが、その際は改めてお伺いします』とまぁ、なんとも潔いことじゃな。


 爪の垢ですらもったいないから、糞尿でも頂いてバカな貴族共の無駄口と悪だくみしか出してこない無用な口に叩きこめば少しは変わるじゃろうか?


 試しにエリオットにやってみたら、怒号と絶叫をまき散らしながら気絶したので防音の魔法をかけて2、3日放置した。


 なお、神殿長自身が剣呑な空気を纏いかけたので、謝罪して中止した。

 提供してくれたということは協力してくれたのではなかったのか?


 と思ったが、どうやらアリアに酷いことをしたエリオットへのお仕置きのつもりじゃったらしいが、婚約者にバレてしまったとのこと。

 

 あの、聡明で冷静な神殿長でも婚約者のルーネ殿には弱いようじゃのう。謝罪の意味も込めて諜報部に全力で調査をさせてルーネ殿の好みの中心を射抜くべく用意したアクセサリーを贈っておいた。


 効果てきめんで、次に会った時に改めて感謝を述べられ、こちらとしても贈ったかいがあったというものじゃった。


 なにせ、貴族共との贈り物は疲れる。

 やれ、良いものだがいついつどこどこの家にはもっと大きなものを贈ったとか、あそこには与えたのに自分には貰えなかったとか、厭味ったらしく浅ましい会話ばかり流れてくるのじゃ。


 そんなに欲しいなら、余がバカ貴族を一人一人斬り殺すべく用意させた無機質な処刑用の剣をくれてやろうか?

 あぁん???



「陛下、こちらが集めた証拠の数々です」

「うむ……」


 ある日、余は大臣たちに呼ばれて執務室に入ると、そこには山のように積まれた書類の束があった。


 証拠と言うのは貴族共の不正の証拠。

 全員を即時処刑にできるような悪辣で罪の重いものだけを集めるように言ったのじゃが、本当にこれ全部そうなのか?


 まぁ、ただ、そういうこともあるじゃろう。

 この国の歴史は古く、いくらバカ貴族と言えども、それぞれの家もまた古い。

 やつらが一代で突然猿に退化したのではなく、もともと悪辣な所業をずっと続けておったのじゃろうから、集めればこれくらいにはなるか。


 むしろ、こういった証拠自体をもみ消していた貴族派の歴代大臣たちの所業の酷さを物語っておるな。


 一人一人墓を暴いて改めて処刑したいくらいじゃな。


「長きにわたる不正、調べるのに苦労したじゃろうな。よくやった」

「……はい」


 余がその苦労をおもんばかって労いの言葉を述べたが、なぜか反応が薄い。

 どういうことじゃ?


 もしかして大臣や騎士たちの親戚や友人知人も含まれていたから、とかじゃろうか?


 だとしたら、すまぬが覚悟はして欲しい。

 こんな不正の歴史を許すわけにはいかぬのじゃ。


「陛下……実はこの証拠はあくまでも今を生きる者たちの不正の証拠でして……」

「はっ?」


 なんじゃと?

 これ全部が???


 いくら貴族派が不正に手を染めていたと言っても、対象の貴族はせいぜい100家ほど。それなのに何千……いや、何万にも及ぶ書類があるように見える。


 いったいどれくらいの罪を重ねたと言うのじゃ?


「しかも、例えば、ここからここまでがラーム・グレアナルド殿のものです」

「はっ?」

 この山が全て一人の不正の証拠じゃと?


 ちょっと待ってほしい……。

 余はあくまでも腐っているのは貴族派の中心で、バカな奴らがのさばっていると思っておった。しかし、ここまでやらかしてもなお責任ある地位に最近までおったのじゃぞ?



 もしかして、文官などは全員節穴なのではないか……?



「陛下。誓って、文官たちの能力は私が保証します。ただ、どうもやつらは怪しい魔法のようなものを使っていたようでして……」

「魔法?」

「はい」


 どういうことじゃ?

 不正を隠して追及されなくするような魔法と言うことか?

 そんなものがあるなら、とっとと余が隠しておる……いや、なんでもないぞ?


 しかし、そんなものがあるなら……いや、あってもおかしくはないか。


 やつらは何代にもわたって……それこそ数百年単位で不正をしてきておる。それを誤魔化してくるのに、そういった魔法を研究し、実用していたということか?


 だから、ここまで大々的にばれなかったと?


 なのに、なぜ余が気付いた?

 なぜ騎士団長や魔導師団長は気付いた?

 なぜ余の部下たちは気付いたのじゃ?

 どういうことなのじゃ?



「まずは処分を。奴らの手立てについては、追い詰め、言質を取る中で明らかになるでしょう」

「それもそうじゃな。では、騎士団長に魔導師団長。抵抗があるだろうから、念には念を入れて事に当たってくれ」

「「はっ!」」


 こうして余はバカな貴族共に処刑のための剣ではなく、不正の証拠の書類の束とやつらを拘束する騎士や軍を贈りつけたのだった。


 喜べ。

 ひいきはしておらぬゆえに。

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