第11話 覚悟の結果(アーサー第二王子視点)
「アリア様。付き合ってくれてありがとうございます」
さぁ、勝負だ。そろそろこの時間が終わる。
アリア様が身じろぎをしたのでこの場に意識を戻したが、結構な時間がたっている。
少しだけ顔色が良くなったアリア様を見つめると、あまりの美しさに気絶しそうになる。
でも、まだだめだ。
僕はまだ何もなしていない。
このままだと彼女は逃げてしまう。
この国から。
僕の腕から。
永遠に……。
全くこんな時期に婚約破棄だなんて、バカ兄の迷惑さに呆れ返ってしまう。
自殺は勝手にやってくれたらいいけど、周りを巻き込むな!
明日には父上が学院に来る。
今日のこの時間は学院生が子供として振る舞える最後の時間。言動には責任を伴うから好き勝手はできないが、それでも学院側は手を出してこない。
正直国難ともいえるこの状況くらい報告してくれと声を大にして言いたいが、そう言う決まりだから仕方ない。父上もあえて探らせたりしていないだろう。
きっとこの状況を最大限に利用した悪辣な計画だったんだろうな。愚兄に取り入っている魔導師団長の息子ギードあたりがこざかし気に考えたにしては手が込んでいるから、もしかしたら貴族派の協力……いや、積極的な関与があったと言われた方が納得できる。
ただ、貴族派は一体何を考えているんだろう。父上はいくら貴族派が暗躍しようとも、そもそもバカ兄が聖女様に婚約破棄を言い渡すなんて夢にも思っていないだろう。僕も思っていなかった。
それはバカ兄自身の自殺に等しいからだ。
まぁ、バカ兄はせいぜい今のひと時の生を謳歌すればいい。明日になれば死ぬ。少なくとも王子としては。
なにせ全く実績なく、才能なく、性格はクズで、未来を感じない。そんなバカ兄が国王になる可能性は本来ない。
ないものを有りに変えていたのは聖女であるアリア様の婚約者であり将来は夫になるという、ただこの一点だけだった。
それを自ら放棄したんだ。
できればその暴走の結末までゆっくり観覧してから、改めてアリア様にプロポーズしたい。でもあのバカ兄の弟としてそれは許されない。
なにせ婚約破棄の痛みは重い。
普通に考えたら次期国王からの婚約破棄なんて死刑宣告に等しいだろう。
今の国政について、聖女様は詳しいことは知らないだろう。だからきっと額面通りに捉えて気に病んでいる。本来、優れた聖女である立場は重いのに、きっと気付いてない。だから落ち込む。だから悩む。
できることなら、今それを指摘したい。あのバカ兄は放っておいて大丈夫。君の方が重要だって。でもきっと理解してもらえない。
こんなことは王族の恥であり、国王である父を始め全員でアリア様に謝罪すべき事案だ。
明日さえ乗り切って、大幅に未来を書き換えた後、僕も全力で謝ろう。
だから今だけは……。
「私はこれで失礼します。その、慰めてくださったこと、ありがとうございました」
ほら来た……勇気を出せアーサー。簡単だ。ただ一言、強引に押し切れ!!!
「ダメです、アリア様」
「えっ?」
「明日を……あなたの明日を僕にください。いや、貰います。僕のはじめてのわがままですから、聞いてください」
よし言えた!
そして、あえてアリア様の話を聞かないために強引に抱きしめてキスをした。
やばい悶絶死しそう。可愛すぎる。
すみません、アリア様。
そしてこの魅力に耐えろ、頑張れ僕!
一世一代の大勝負だぞ!
なんとか上手く行った。
顔を真っ赤にしたアリア様からなんとか『はい』という言葉だけ引き出した。
ほかの言葉は全部無視したとも言う。
なんて不敬。聖女様に対する冒涜だ。その御言葉を聞かないなんて。
でもこれが。これこそが幸せへの道だ。
覚悟しろよ、バカ兄。そしてその取り巻きども。
僕は絶対に貴様らを許さない。
神の如きアリア様を思い悩ませ、悲しませた罪は重い。
もし王となればやることはいっぱいだ。
規律を取り戻し、威厳を取り戻し、そしてアリア様に平和を捧げる。
誰も許さない。
今まで粛々と実績を積んできた。
協力者は多いはずだ。
あのバカ兄どもを地獄に落とす……。
僕のすべてを使って……。
翌日、予想通り騒ぎになった卒業式の親族控室にアリア様を伴って入った。
アリア様は『自分はここにいてはいけない』と思い詰めた表情をされていたが、説き伏せた。
まぁ、僕の説得よりも、こんな場所に現れた淀みを見て発揮された使命感によるものな気がするが問題ない。淀みは小さいとはいえ、人が密集した場に現れたことによって、数名が影響を受けて転がっている。
まぁ、アリア様にとっては全く問題にならない程度の淀みでよかったな。
やられてしまったものの介抱は学院に任せればいいだろう。なぜ副学院長クラスの先生があの程度の淀みで昏倒しているのかは理解に苦しむが……。
それにしても、見てよあのバカ兄のバカそうな表情。それに言動。
すでに父上から切り捨てられているのに気付きもしないバカっぷり。
「すまなかったアリア殿。そしてよくやってくれたアーサー」
父上は正しく理解してくれたようだ。
その表情は国王らしく冷静で威厳を保ったものだったが、僕にはわかる。
アリア殿が国外逃亡なんてことにならなかったことを心底喜んでくれていると。
あとはきっと、いろんなことに手が回っていない状況を恥じているのか、とても小さいものだったが確かに目礼された。
そして衆目の中にもかかわらず、簡単ながらもアリア様に謝意を評した。恐らく、親しいものだけになったら、全身全霊で謝罪を繰り出すことだろう。
そんな様子を見て僕は安心した。
ほぼほぼ自分の欲望通りに動いただけだけど、結果的にバカ兄たち以外はみんな幸せになるから問題ないよね。
とんでもない状況に陥った学院が"魔力の淀み"と"魔物"の出現を理由に一旦卒業式を延期したので僕達は退散したが、その際に父から肩をぽんと叩かれた。
その表情はとても満足そうなものだった。
けど、バカの処分はちゃんとやってくださいね?
僕の出番ももちろんお願いします。
***
NEXT→国王様のターン!!!!!!!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます