僕の終末日記
マジョルカ
20xx年5月4日
その日、世界は静かに崩れ始めていた。アオイは、いつもと変わらない朝を迎えた。自分が生活している小さな街も、平穏無事で、通学路の桜の木がいつもと変わらず満開を迎えていた。しかし、街の人々の表情は、どこか違っていた。
「どうしてみんな、こんなに焦っているんだろう」
アオイは、何も知らずに、どこか不安を抱えながら学校に向かって歩き続けた。その日は、ただの平凡な一日であるはずだった。しかし、何かが違った。それが何か分からないまま、アオイはいつものように教室に足を踏み入れる。
放課後、アオイは友人たちと校庭を歩きながら、どこかモヤモヤした気持ちを拭いきれなかった。そんな時、突然、空が激しくひび割れた。
それは、まるで割れたガラスのような音が大地を揺らし、空に亀裂が入ったかのように見えた。周りの人々は呆然と立ち尽くし、誰もがその出来事を現実とは思えなかった。しかし、それが現実であることを、アオイはその目で確かに見た。
「何だ…これは?」
その瞬間、彼の頭の中に、突如として声が響いた。
「終焉は、すでに始まっている」
その声は、まるで天から降り注いだようだった。驚いたアオイはその場で立ち尽くし、周囲の混乱を見ていることしかできなかった。しかし、何か冷たい予感が、彼の心の奥底に深く刻まれていった。
その後、アオイが家に帰ると、家の中は不穏な空気に包まれていた。テレビでは、世界中で謎の現象が次々と発生しているという報道が流れていた。地震、洪水、気候変動…そして、世界各地で突如として起きた謎の崩壊事件。どれもが、説明のつかない異常だった。
アオイは机の引き出しに眠っていた古い本を引っ張り出した。その本は、彼の祖父から譲り受けたもので、無造作に積まれていた。表紙に書かれた「預言の書」というタイトルに目を落とし、アオイはその本を開いた。
中には奇妙な文字が並んでおり、その一節が目に留まる。
「終焉の時、人々はその兆しを見逃す。そして、それが訪れた時、選ばれし者が現れる。」
その瞬間、アオイの頭の中に、再びあの声が響いた。
「君がその選ばれし者だ。」
翌日、学校は通常通り開校されたが、周囲の様子は明らかにおかしかった。アオイは、いつもと違って周囲の人々の会話や行動に敏感になっていた。どこからか漏れ聞こえる異常な情報、混乱した市民の声、そして、政治家たちの急な対応に忙しそうな様子…。
その中で、アオイは目撃することになる。一人の女性が、目の前で突然倒れる。その女性は、震える手で、アオイを見上げながら叫んだ。
「あなたが…あなたが始まりの者なの?」
その言葉が、アオイの胸を強く打つ。しかし、何も答えることはできなかった。彼はその後、その女性がすぐに連れ去られるのを見届けただけだった。
その日の夜、アオイは一人で考え込んでいた。自分が選ばれし者であるとされる理由が、全く理解できなかった。だが、あることに気づく。
彼が持っていたあの「預言の書」に書かれていた言葉の一つが、頭の中で反響し始めた。それは、祖父が遺したメッセージだった。
「人類は、選ばれし者が登場した時、運命を変える鍵を握る。」
アオイは、その言葉が現実のものだと感じざるを得なかった。
そして、翌日から恐ろしい現象が世界各地で急速に広がり始める。気候が激変し、気圧が異常に上昇したり、各地で人々が狂気に駆られて暴動を起こすなど、もはや世界が崩壊の淵に立たされているのは明白だった。
アオイは、次第に自分の役割を果たさなければならないという使命感を抱くようになった。だが、どこに行けばいいのか、何をすべきなのかはまだ分からない。ただ、何かが迫っていることだけは確かだった。
そして、その夜、アオイの元に一通の封筒が届く。その封筒には、かつて彼の祖父が所有していた書物の中に隠されていた、奇妙な地図と暗号が入っていた。
地図に示された場所は、遠く離れた山中にある廃墟の遺跡。そこには、アオイが知らなかった秘密が眠っているという。そして、その遺跡には、「選ばれし者」が訪れる運命が記されているという。
アオイは、それを手に取ると、強烈な決意を胸に抱いた。これから何が起きるのか、誰も知らない。ただ一つ言えることは、世界の終焉が本当に始まったこと。そして、彼がその運命を切り開く者であるということだけだった。
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