闇のXero —双子闇魔術師紀行—

兄諮濫也(あにはからんや)

プロローグ

これはこことはまた別の世界のお話――――――――――――


今から200年前のこと。

魔法が盛んなエウロペ地方は当時にしては高度な文明を築き、衝突やいがみ合いがありながらも平和に暮らしていた。


だがある日、『サタン』を名乗る男の出す瘴気によって一気にエウロペ地方は闇の世界へ落された。


謎の病が流行り、人々はみな行き倒れ、特にサタンと同じ闇魔術師は差別され処刑されるなんてこともあった。


そこで立ち上がったのが大魔術師、モンフティー・ブランゼントであった。


ブランゼントはエウロペ地方の国々を渡り歩き、跋扈する魔獣や魔王を次々に討伐していった。これを知ったエウロペの民たちは彼を『英雄』と呼んだ。だが、ブランゼントは重圧や魔獣を殺す罪悪感によってどんどん心がやつれていった。


ついにサタンと対峙した際には、ブランゼントは何の造作もなくサタンを闇に葬った。


エウロペ地方に笑顔が戻り、彼の出身地であるバータイン王国の国民たちはみんな彼の帰りを待っていた。


―――――そのころにはブランゼントは自ら命を絶っていた。





エウロペ地方の民は彼の死を悼み、せっかく晴れ間が戻ったこの場所はまた悲しみに覆われてしまった。

そしていずれ一部の短絡的な民はついにこう思うようになった。



『 サタンと同じ闇魔術師は悪だ 』、と。


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