雨の日の出来事

少年「ねぇねぇおじさん？」

男性「……もしかして私に話しかけてるのかな？」

少年「そうだよ。おじさんはさ、なんで今時そんな古くさい傘さしてるの？　今は壊れないビニール傘が主流なのに」

男性「この傘は私の父の形見なんだ」

少年「そうだとしても、そんな傘だと視野が狭まって事故に遭っちゃうよ？」

男性「心配してくれてるのか？　優しいんだな君は。……実は形見というのは嘘なんだ。おじさん、円形脱毛症を隠すために、ビニール傘じゃなくてこの傘をさしているんだ」

少年「そうなの？　コンプレックスだったのにごめんね。とにかく事故にだけは気をつけてね」

男性「わかったよ。どうもありがとう。君も気をつけてね。(良かった。私が幽霊だってバレなかった。でも、ハゲ隠しで普通の傘さしてるなんて言い訳としてはキツイよなぁ。他に良い言い訳考えようっと)」

少年「はぁ。(僕みたいに雨の日の事故で死ぬような人は出てほしくなかったんだけど、あのおじさんは説得できなかったな)」