第3話
「あ、俺、まだ何も頼んで来てないや」
俺は羽津稀に逢ってから何も頼んでいない事を思い出す。
「あたし、あの奥の席に座ってるから」
羽津稀は奥の席を指差してわかり易く居場所を説明してくれた。
「OK。すぐ戻る」
俺は階段を降りようとした。
「ねぇ、待って」
羽津稀が止める。
俺は羽津稀を見た。
「あと20分位でお店閉まるよ?」
羽津稀が言う。
「何も頼まないのは気まずいからシェイクかなんか買って来るよ」
俺は思った事をそのまま羽津稀に伝えた。
「わかった」
羽津稀は席に戻り、俺は飲み物を買いに行き、結局はストロベリーシェイクを買って席に着く。
するとすぐに蛍の光が流れ始めた。
「話せなかったね」
羽津稀は苦笑する。
「ホントだ」
俺も苦笑した。
「連絡先、交換しない?」
「良いね」
羽津稀からの提案で俺達は連絡先を交換。
通話は金がかかると言う事でメールのやりとりが始まる。
1年後の春には羽津稀は卒業して就職。
社会人の陸上部に入部。
定時制はあと1年あるんだが。
「社会人と学生じゃ分が悪い」
俺は羽津稀の前で半分ふてくされる。
「友達に分なんてあるの?」
羽津稀は言う。
「友達ねぇ」
俺は何とも言いがたい気持ちになった。
「窓伽ってデザイナーになるんだよね?」
羽津稀が聞いて来る。
「その内ね」
俺はふてくされたまま答えた。
「定時行きながらバイトはしてるんだから、ふてくされる事は無いんじゃない?一人暮らしだってしてるんだし」
羽津稀が言う。
「デザイナーになるの反対されて家を追い出されたのがきっかけだけどね」
俺は苦笑した。
「お母さんもお兄さんもお姉さんも優しく接してくれるじゃない」
羽津稀が家族の話をし始める。
羽津稀は既に俺の家族に逢っていた。
紹介しておきます。
母の葉槻鞘伽(はづき・さやか)。
兄の葉槻稜我(はづき・りょうが)。
姉の葉槻綾伽(はづき・あやか)です。
ついでに父の葉槻耕我(はづき・こうが)が居ます。
親父は社長で、母ちゃんは社長夫人。
兄ちゃんはアイドルで姉ちゃんは父ちゃんに溺愛されとります。
親父は兄ちゃんも家から追い出した。
姉ちゃんは親父に言いたい事を言うんだけど溺愛されてるんだよね。
母ちゃんは俺の事も兄ちゃんの事も姉ちゃんと同じ様に大事にしてくれていて、俺の家に遊びに来たりする。
黙っていきなりとか。
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