【もり〗は、かくも甘🖤辛く👁️‍🗨️ボクを誘う……

ぼんびゅくすもりー

AetD🔗 ―― Artificial Human & Destroyed person ―― Arche

Phase.1 ファーストステップ

001.【 Θ 《シータ》 または ⌒ 《アーク》】~ ICHI AKIRA (一 翠)~ 


 【 森羅しんら 】と書いて【 もり 】――WORLDワールド……


 それは《消滅(死)》と《発生(生)》の温床――

 悲喜こもごも変化し続ける有限無限の Crucibleクルーシブル (試練・困難・坩堝るつぼ)――


 生きとし生けるもの・死してはめぐ組みあがる芽生えるものによる親和と摩擦、対立と融和調和の領域にして、


 酷薄こくはくなまでのねあいを体現するこの宇宙せかい芽生めばえた願いさかんな生命いのちのたまり場――


 ぽつぽつと息づく願いの――拝所うがんじゅ――…


 🕔🕔🕔


 覚醒かくせいすると――…

 やはり、五時ジャスト。


 ぼくは、いつもこの時刻に目がさめる。


 睡眠がたりていなくてもこの瞬間、ぼくの意識は鮮明さをきわめる。

 どうしてなのかわからないけれど、瞬時に心身の感覚がよみがえるんだ。


 だから、いちどは起きてしまう。


 きのう眠りについたのは二時すぎ――

 疲れが残っていたけれど、意識だけはえと澄みきっていた。



 感覚の片隅に〝危機意識警告〟がチラついている――


 ひとつといわず、異常が発生しているようだ。


 とあらば~なら対処しなきゃ……

 

 体が重だるかったが、情報状況を確認しに隣室へ移動する。

 問題があれば対応し、特になければようすをうかがい非常にそなえる。

 それがぼくの日課ルーティンだ。


 その空間この場所に敷かれた管制機構――コンピューターは、ほとんど、ぼくの一部。

 ぼくの感覚の延長で――

 ぼくが世界を認識する手近な手段。

 ずっとたずさわってきたもの。



 あー……わいてる、わいてる――…

 というか、問題が発生してはびこっていた。



 各所の脆弱ぜいじゃく性をつこうとする干渉・侵害しんがい羅列られつ

 管理権限を無視した侵入、改悪、搾取ぬきとり、微細な不具合……

 

 ひとつふたつ、気になる箇所かしょがあったが些細なものばかり。

 大半は大事にいたる前に遮断されふせがれ、一部は保留されていた。

 見てのとおり――てきとうにしていた部分もあるが、深部は脅かされていない。


 いつになく盛況だけど、ざっと確認したところ、いずれも、ぼくが予測して組んでいたプログラムプランで対処可能。


 用意していた手札それすべてを使いきるまでもなかった。


 誰かが侵入できて、ぼくが侵入できないシステムはない――と、いわれている。


 ぼくは、そうとは思わないけれど……。

 みながいうには、ぼくは時代の寵児ちょうじ――


 類を見ない情報工学――《Informationインフォメーション Engineeringエンジニアリング》――

 情報生命科学――《Dataデータ Scienceサイエンス》の鬼才で……


 遺伝子工学――《Geneticジェネティック Engineeringエンジニアリング》の産物なのだそうだ。



 必要を現実にしているのは、ぼくじゃない。

 指示はするけど、その構想を実行しているのは、このシステムなんだけどな……



「《COコー》――」



 ――《COSコサイン》――

 略して〝《COコ―》〟。


 それが、ぼくがまかされているスーパーQコンピュータースパコンの名前だ。


 名づけたのは、ぼくの前任。

 このシステムをたちあげた技術者天才たち。


 名称呼び名由来ゆらいは、【三角比】。

 《Cosineコサイン》の略式表記――《余弦cos》。


 〝直角三角形〟において。ななめのラインと〝底〟と定義されるラインの比――

 ひとつの点を共有するふたつの辺――その角度と長さ《距離》の関係をしめす定義表現だ。


 どうじに〝Becauseビコーズ(なぜなら)〟をちぢめた表記の《COSコス》でもあり、


 《CO》とすることで、《Companyカンパニー》とも《Comingカミング outアウト》であるとも――


 うしろに続く単語に意味合いをそえ、状態を整える役目をはたす〝英単えいたん接頭語せっとうご〟の《co》として〝共同〟〝相互そうご〟の意図もくむ……ともされる。


 《CO》であっても〝炭素カーボン〟という発想はないらしい……(元素骨格の職人なのにね)。


 ともあれ、いま――

 いくつか、〝停止〟や〝遅滞〟、不都合が発生しているようなので対策をる。


 発生順と症状の重さを比較ひかくして、どれを優先し、なにを後にするかだ。


 そうして思いついたコードのならびが、ぼくに、おかしな所感をもたらした。



「グレード3定義で対応。

 掃討開始――プランK・U・S・O・Y・A・R・O・U……」



 ――対策コード……変換……さしかえ、撲滅ぼくめつ……挿入そうにゅう……再構築……

   ローマ字表記変換……下品、低俗、悪態……罵倒ばとう用語……



 口にした内容命令から連想される単語・イメージが、ぼくの頭の中感覚を走破する。

 目の前にあるつるりとした球面には〝らじゃー〟の白抜き文字。


 《COコー》が示された工程を〝実行〟するにあたり、表示した単語だ。


 すこし前まで〝executionエクゼキューション(実行・管理)〟だったそれをぼくが差しえた。


 惰性だせいでここに常駐するあるぼくの、ほんの遊興……ことば遊び。

 ささいなたわむれだ。


 そのくらいの書き換えは自由。


 そこの球面上に複数の画面を呼び起こすことも可能だけど、必要以上のむやみな起動動作はひかえている。

  

 修繕にせよ、プログラミングにせよ、

 《COコー》を管理し育てる存在は、いま、ぼくしかいないから、気が向けば、また変えるかもしれない。



 ぼくは〝人〟だけど……

 ぼくには生物として自然に進化してきた〝人〟とはちがう部分がある。


 その系譜けいふにありながら、人造の細胞のようなものべつのものが混在したミュータント。


 過去の天才が変化させた……または、生みだした奇跡にして〝無二〟ともいわれる混ざりもの。


 〝Hybridハイブリット〟――雑種……


 その細胞の特性から〝不老〟の可能性をささやかれたりしているけれど、代謝たいしゃは存在し、成長する。

 病気にもなる。

 不死ではない。


 ぼくを構成する生体細胞は、過剰も不足もなく一定のサイクルで再生消滅をくりかえす。

 いちおう、人のように生きているけど、なにが弱点となるのか、いつ活動が途絶えるのかも不明の生命。

 生みだされた科学と化学ばけがく・生物学の産物だ。

 

 

 ――《ICHI AKIRA ~いち あきら~》または《アーク(Arc――弓・・契約の箱――)》――



 それが、ぼくの名前。


 かつて、ぼくをそう呼んだのは、過去に存在した天才たちで……


 その後継者たちは、ぼくをこの身の〝【内部/半導体細胞(オーラ)~相棒~】(あくまでも〝的〟であって、そのものではない)〟といっしょのものと見たてて混同して――〝《Θシータ》〟と呼ぶ。


 確定されているわけでもなかったけれど、どちらも呼び名。

 人がもちだす存在の名称。


 《CO コーことCOSコサイン》。

 《COコー》の前規格としてあった《SINシン/サイン》。

 それらを手掛けたプロジェクトチーム名の〝《TANタン/タンジェント》。


 それに〝ぼく〟を解明するべく立ちあげられた〝プロジェクト《Θシータ》〟もくわえて、関数観念をもとにめいうたれた一連のコードネームだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る