シナモンが家出したってことで、さっそく彼女を迎えに月からひとりの男が

地球にやって来た。

その人物はベルジアンの家の執事で「ジャージーウーリー」って名前の人物・・・。

いや、ウサギ・・・だけどシナモンとは別の種族のドワーフ。

すらっとした体型で年齢は30歳前後か？

清潔そうな短髪にメガネをかけている。

普段はいたって穏やか、一見温厚そうに見えて切れ長の瞳は暗く普通のドワーフ

とは違っていた。

なんでもの父親が治安の悪いエリアで彼を窮地から救ってベルジアン家の屋敷に

連れて帰ってきたらしい。

シナモンの家はジャージーウーリーの他にもメイドさんが数人いるらしい。

冒頭でも言ったがシナモンの家は富裕層、大金持ち。

そのジャージーウーリーがシナモンを迎えにやって来た。

ジャージーウーリーはシナモンみたいにUFOに乗っては来ない。

彼は瞬間移動ができるので月から一気に地球へ飛んできたんだ。

で、ジャージーウーリーが空星（あけぼし）家の庭に降り立った時、光太は学校に行っていて家にはいなかった。

お父さんの流太（りゅうた）さんは、お好み焼き屋さんの店にお好み焼きを焼きに行っていていなかった。

ちなみにシナモンはお父さんの流太さんの焼くお好み焼きが大好物だった。

で、家にいたのは、お母さんの綺麗（きれい）さんとシナモンだけだった。

庭でモノが壊れるような音がしたので綺麗（きれい）さんはなにごとかとサッシドアを開けて庭を見た。

そしたら、知らない男の人が庭に置いてあったバケツに足を突っ込んで、あたふた

していた。

「まあ、どなた？・・・」

「あ、ジャージーウーリー」

綺麗（きれい）さんの後から外に出ていたシナモンが横から言った。

「え？あの人、シナモンちゃんのお知り合い？」

「はい・・うちのヒツジです」

「え？羊？」

「あ、これはお嬢様・・・」

「ジャージーウーリーそこでなにしてるんです？」

「どうも〜失礼しました」

「ところで、そちらは、このお宅のお嬢様でしょうか？」

ジャージーウーリーシナモンは綺麗さんに挨拶しようとした。

「お、お嬢様？」

「私はお嬢様じゃなくて主婦です」

「この綺麗なお母様は私がお世話になってる空星（あけぼし）家の奥様で「綺麗さん」よジャージーウーリー」

「綺麗さん・・・こっちジャージーウーリーって言って私んちの執事さん」

「はあ、どうも・・・ジャージーウーリーさん」

「羊じゃなくて執事さんね」

「改めまして、綺麗様」

「ところで・・・お嬢様・・・旦那様と奥様が心配なさっておられます」

「ってことで私が自らお迎えに参りました・・・さ、月に帰りましょう」

「せっかくだけど私、帰るつもりないから」

「なにをおっしゃるウサギさん・・・帰ってもらないと困ります」

「お嬢様を放って私ひとりで手ぶらでは帰るわけにはいきませんからね」

「誰がなんと言おうと帰らないって言ったら帰らないの」

「困りましたな・・・」

「いいかげんご機嫌を直されたらどうです？」

「あ〜それはもうどうでもいいの、帰らない理由は他にできただから・・・」

「ほう・・・その理由とは？」

「内緒・・・そういうのはクチにすると泡になって消えちゃうの」

「夢や希望はね、人に言っちゃいけないんだよ、叶わなくなっちゃうからね」

「そんなもんですかね・・・」

「あの〜立ち話もなんですから、家の中に入りません？」

ふたりの話を黙って聞いていた綺麗さんが言った。

「そうですか？・・・ではお言葉に甘えて」

「え〜帰らないんだ？ジャージーウーリー」

「ですから、お嬢様を残して私ひとりでは帰れませんから」

「このさい、お嬢様が帰るって言うまで綺麗様んちに逗留させていただきます」

「旦那様より充分、おヒマは頂いてきましたので・・・」

「ジャージーウーリー、居座るつもり？」

「お嬢様だって居座ってるではありませんか」

「ってことで綺麗さん、よろしくお願いしたします」

「私の生活費はご心配なく、必要経費はちゃんと清算してお支払いいたし

ますから」

「居座るのはいいけど、帰ろう帰ろう言わないでね、うっとうしいから」

「それに、いちいち私に説教しないでいてくれるとありがないわね・・・

ジャージーウーリーはいつでも文句が多いんだから・・・」

「間違いは正さねばまりませんからクチうるさく言うのですよ」

「お嬢様のためです」

「イジメだよ・・・執事が主人をいじめてるぅ・・・ただのモラハラ、パワハラ」

「解釈の違いですな」

「とにかく何日いても何ヶ月いても何年いても私帰らないからね」

「けっこう・・・お付き合いさせていただきます」

つづく。