第1話

***



「柚月、こっち」



クリニックの診療も終わり、ようやく仕事が終わった午後8時過ぎ。


急ぎ足でビルを出ると、そこには手を振りながら待つ千明の姿があった。



「千明ごめんね!待ったでしょ?」



掛け声に気づいて千明の元に駆け寄ると、わずかに乱れたあたしの髪を手櫛で整えてくれる。



「走ってこなくてもいいのに。別に待ってる時間も苦じゃないし?」



そんな事を口にしながらクスクス笑う千明を見て、嬉しいような照れくさいような、そんな感覚に襲われるのはいつもの事だった。

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