プロキオン

青馬 達未

第1話

 この川の流れの様に、時も流れる。

 ただ流れの速さは変わらない。

 ただこうして、いつもの様に同じ方向へと流れるだけだ。


 僕はいつものように、いつもの場所で腰を下ろしいつもの景色を眺めている。

 もう、何年も同じ流れを見てきた事だ。


 川のせせらぎが心地よく耳に響き、風がそっと頬を撫でる。

 水面に映るあなたとの思い出。

 よく、一緒に歩いた道、遊んだ場所……。

 毎年、春夏秋冬を一緒に過ごしてきた記憶。

 春は桜の花びらが舞い、夏は蝉の声が響き渡る。

 秋には落ち葉を踏みしめながら歩き、冬には白い息を吐きながら寄り添って歩い 

 た。


 僕と君は歳が近かったね。

 共に成長し、友になった。

 

 たくさんの思い出を思い出しながら。

 「懐かしいな」

 そんな、感傷に浸る日々を僕はずっと送っている。

 

 

「おや?この匂いは?」

 ふと懐かしい匂いが風に乗って届いた。

 顔を上げると、老人がこちらへ向かってきていた。

 どんなに変わろうと。

 あの頃と変わらない瞳をした小さな相棒だった。

「おや?待ってくれたのかい?」

「ワン!」と、尻尾を大きく振りながら、吠える。

 懐かしい笑顔で君は答える。

「一緒に歩くのはいつぶりかな?」


 この川の流れの様に、時も流れる。

 しかし、今は、まるで時間が止まったかのように、あの日の続きが始まる気がし 

 た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

プロキオン 青馬 達未 @TatsuB

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ