第11話

「ありがとう、ございます……っ」



 そのままでもいいのだと。


 無理をして付き合う必要など無い。

 無理をして忘れる必要も無い。


 ただありのまま、自分の感情に身を任せる事も時には“必要”なのだと。



「じゃあ、また」



 そうして彼は、背中を向ける。


 私は追い掛けなかった。

 彼も振り返らなかった。


 だけど時間はとても穏やかで、窓から差し込むオレンジが酷く柔らかく見える。



「……また」



 小さく呟いた自分の声がもう絶望に沈んでいない事に気が付いて、思わず小さく笑った―――。


 ある年の、秋の夕暮。

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